著者、大戦略について、日本側の目的は現状維持、とし中国側は現状変更とする。
だが立場によって現状の変更や維持はちがい、単純ではない。
確かに中国は、国力の増大とともに南シナ海の人工島など現状変更をすすめている。
台湾の将来的な統一も現状変更に入るだろう。
だが台湾は現状変更を求めておらず、独立志向もしていもいない。
中国も、台湾の独立への動きがでた場合に軍事的介入をすると言っているだけだ。もちろん今は能力も追いついていないが。
米国はどうか?
基本的に台湾は「一つの中国」との立場を維持しながらも、ペロシ氏が訪問して台湾の独立を煽ったりして、現状変更を進めているように見える。その結果、中国に、台湾へのまたとない大軍事演習を行う理由づけを与えてしまった。
米国の「現状維持」は、世界への覇権の維持であり、中国の台頭を許さないことだ。
著者が日本側の「現状維持」を、尖閣など日本の国土に関すること以外、台湾や南シナ海にまで広げているのは大問題だ。
日本は、台湾を中国の一部と認めている。これを変えるのは、重大な条約上の約束違反であり現状変更だ。また南シナ海は遠く離れ周辺国の問題だ。現状維持は、日本の領海・周辺に限りべきだ。
これは米国の覇権に付き従う立場であって、戦争に参加する立場となる。
日本が「現状維持」と言っても、中国にとっては現状支持ではなく、現状変更と捉える事も大いにある。
米側は覇権が「現状維持」であり、そのため台湾めぐって中国との摩擦を起こす「現状変更」を行っていると見える。
そして日本は、その米国の「現状維持」と「現状変更」の両方に応えようとしている。
問題は、戦場はどこか? だ。
米国ではない。太平洋の向こう側に戦場を及ぶことは、米国民が絶対的に避ける。
では、どこか?
それは、軍事基地・施設を造っている南西諸島~九州・日本となる。
その事実を自公政権、防衛関係者が国民に正面から説明しない事が問題だ。
もっとも権力側は本質的にそんなことをしない。ならば主権者が主権者らしく説明を求める事こそ必要だ。
でなければ、なんの覚悟もなく戦争準備をしていることになる。
戦場になる地の人々が守りたいのは、住んでいる人の命と生活だ。
研究所で作戦を練っている人たちが守りたいのは、国家でありそのための軍事力だろう。
米国も中国も日本もロシアも然り。