サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

カール・マルクス-佐々木隆治⑥ ザスーリチへの返事


『ザスーリチの手紙への回答』および それの『下書き』考-佐藤正人-  
 を読むと、草稿は4つもあり、手紙・本文含め、詳しく書いてあり、状況的にはよくわかる。(1972.10 論文)
 当時のマルクスは、ロシア内の運動と論争との関わり、『農耕共同体』の分析・研究の途上、健康問題(最晩年)や他の仕事など、困難で単純ではない中での草稿及び手紙と思われる。
 佐々木氏の本は、佐藤氏が論文を書いてから44年後のものあとのもの。MEGAの研究などを経ながら、特に「物質代謝の亀裂」論が大きく展開されているのが新しい点だ。

 佐藤氏の引用にはなかったが第一稿の中で次の事を紹介する。
「『農耕共同体』のこういう発展が現代の歴史的潮流に照応するものであることの最良の証拠は、資本主義的生産が最大の飛躍を遂げているヨーロッパとアメリカ諸国においてこの生産がおちいっている宿命的な危機である。この危機は、資本主義的生産が消滅することによって、近代社会がもっとも原古的な型のより高次な形態たる集団的な生産と取得へ復帰することによって終結するであろう」
 
 斎藤氏も佐々木氏もマルクスの抜粋ノートの研究からこれらの主張をしている。
 マルクスは最晩年、コヴァレフスキー「共同体的土地所有」、シーウィル「インドの分析的歴史」、マニー「ジャワ」などを研究し、共同体の生命力や植民地主義への抵抗力を示唆する箇所を重点的に抜粋していたという。
 なので佐々木氏は、「晩期のマルクスは、かつての近代化論を撤回しただけでなく、前近代的な共同体の生命力によって資本の力を封じ込める戦略に転換したとさえいえるだろう」と述べる。
 ザスーリチからの手紙、草稿、返事に至る解説は、概ね佐藤氏の論文でいいのだろう。
 同時に当時のマルクスの思考錯誤の方向から、現在に生かすべき内容を読み取る事も極めて重要だ。私は、そちらに関心がある。
 資本主義は、経済的な矛盾だけでなく、自然の関係で宿命的な危機があって、資本主義以前の共同体社会の中に持続可能性をみいだし、高いレベルでの共同体を生み出すべきだと。
 でなければ、過剰に大量に行う物質代謝、膨大な物質の改変と移動、エネルギーの排出をともなう資本主義は、やがて資本主義を死滅させる。生物種の絶滅につづき、人類社会の崩壊によって。

 写真はヤマモモです。
 人は、幸せになるために生きている、   わけでしょう。
 何が幸福なのか、どう感じるのか、人それぞれ。
 それは子ども期の体験や感じ方が影響していて、私の場合は育ちが農山村だったため、大人になってそれが蘇ってくる。
 6月、この時期の子どものおやつはヤマモモでした。大きな木によじ登って食べた。酸っぱい。種がほとんどで食べる部分は少ない。でもこの味が大人になって忘れられず食べたくなるので庭に植えた。
 ケーキや子どもの頃、ケーキやお菓子をほとんど食べたことのなかった私だが、不幸だったとは思えない。木登りの能力を高め、甘酸っぱさもおいしいと感じる能力を高めてくれた自然、ヤマモモとの物質代謝に感謝です。