サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

物質代謝の亀裂-共同体

 「もちろん村落マルクが木材、干し草、あるいは堆肥さえも、それどころか家畜(豚!)でさえ、村落の構成員以外に売ることを許しておらず、マルク内で収穫された農作物やワインが、マクル内で消費されるように命令するならば(そのことから、様々な罰令権が生じた)、耕地の地力維持のための手段に事欠かないのみならず、森林や牧草地からの補助を利用することによって、あるいはさらに河川によって養分を与えられた草地を利用することによって、いたるところで地力の増大が起きたに違いなかった」(マウラー)
 これはドイツの法学者フォン・マウラーの『マルク・ホーフ・村落・都市制度および公権力の歴史序説』という本に書かれていたことだが、このことをフラースが『農業危機とその治癒手段』の中で引用していて、マルクスが晩年にこれらを研究し、ノートに抜粋していた。
 斎藤幸平氏の「大洪水の前に」から勉強中です。でも理解不十分でうまくまとめらきれない。
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 マルクスは、これらの研究から、資本主義以前の社会の中で、ドイツやロシアなどの共同体に、持続可能性を見つけた。
「自然の法則を十分に認識していない前近代社会が自然の『復讐』を引き起こした(エンゲルス)という見解とは正反対の、共同体的生産においては、人間と自然の物質代謝の持続可能性が、その『生命力』の源泉となっていたというのがマルクスの認識」と斎藤氏。
 これがマルクスの、ロシアのザスーリチの質問への返事の手紙で、資本主義を経ないでも社会主義への到達可能という話になってくる。
 またマルクスは、
 「科学についても、科学は単に生産力を高め、ポストキャピタリズムの実現に向けた物質的諸条件を準備するだけではない。---それは既存の社会システムにおいて支配的な掠奪の非合理性を示し、より持続可能な生産の実現を求めることで、資本主義の正当性に大きな疑問を投げかける役割を担っている」「自然的制約の把握こそが自然科学研究の狙いであったことが抜粋ノートを読むことわかる」と斎藤氏。
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 「長期的な地質変動とそれに連動する『様々な地域における大きな気候の変化がしばしば生じていたに違いない』、『気候の変化は種の破壊を含んでいる」(MEGA)
 マルクスは、「種の絶滅は依然として進行している(人間自身がもっとも活動的な根源者である)というジュークスの指摘を抜粋している」、「自然科学の技術学的応用が『資本の生産力』として現れるために、自然との物質代謝の攪乱が生じてしまう危険性を察知し、資本主義が持続可能性を持たない社会システムであることを警告した」と斎藤氏。
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 だから単に、生産力を向上させれば、労働時間が短くなり、『自由の国』になる、これが社会主義共産主義社会だという、これまで私たちが学んできた話とはちがい、持続可能性のために労働時間を短くし、技術も持続可能性のために使う、という立場、これがマルクスの描いていた社会主義共産主義の「未来の社会」だという。
 つまり現代の地球環境破壊・人新世の時代の問いにも応えるような内容を、晩年のマルクスは研究し、ノートに書いていたということで、私としては大変嬉しいかぎりだ。
 これが、斎藤氏の「脱成長コミュニズム」の考えにつながっていて、私も求めていた考えにつうじる。

 「脱経済成長」はピンとこない人も多いと思う。ローマクラブの「成長の限界」についてはかなり書いてきたけど→「脱成長」には考えが及ばなかった。
adayasu.hatenablog.com

 しかし経済成長をやめるなかで、GDPに含まれている、ムダで不必要で害悪なブルシットジョブをやめる。戦争に関わる産業も軍縮で減らしてやめる。
 逆に、家事労働や家庭介護などは、経済活動、仕事に位置付ける、これが正当なことと思う。