サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

ナラティブ① 事実と物語

 大治朋子著の「人を動かすナラティブ」を読んでいる。
 様々な研究結果や事例が書かれていて興味が引かれる内容だ。
 人々の認識や行動がそれぞれのナラティブ(物語)によって動かされているいう。
 ナラティブ研究が進んでいるイスラエルの例がたくさん出てくるが、どうも事実や人権や実質民主主義や正義と言った事とは距離を置き、ナラティブ物語だけを扱っているようだ。
 p241に、201年イスラエルハマスの戦闘で、SNSと攻撃の関係についてアメリカン大学のトーマス・ジーツフォス教授の分析を紹介している。
 「民主主義を標榜する主体(イスラエル)は国際世論の支持が敵対勢力に傾くと攻撃を減らし、SNSプロパガンダで反撃‥」とある。
 一方「民主主義を標榜しない主体(ハマス)は、いわばフリーハンドであり、何ら制約を受けない」と、無批判に紹介(正当化)している。
 「なんら制約を受けない」→イスラエル最大の支援国アメリカの学者らしい認識だ。
 彼らは、カラシニコフやロケット弾ぐらいしか持っていない。これをどう制約するというのか?経済封鎖でイスラエルや米国から制約されている。
 パレスチナ側は、武装集団レベルの軍事力しかなく、経済も地域も封鎖されている。イスラエル側は戦闘機にミサイル、戦車に艦船、高い技術力、爆弾など兵器は米国からもらい放題だ。
 この戦闘でパレスチナ側の死者は150人以上、イスラエル側は6人、この事実が物語っている。イスラエル側は軍人だろうが、パレスチナ側は市民や子ども達も多数含まれ、負傷者は倍以上だろう。
 著者の大治朋子氏、「ナラティブ論」は学ぶところが多いが、強者の側に立った分析が多いと思える。
 現在、ガザでは4万人以上もの殺害が進行中、出版が一年遅れたとしても同じ内容だっただろうか。