「世界滅亡マシン」(岩波:ダニエル・エルズバーク著)のつづきです。
ソ連の潜水艦4隻のうち3隻は、米軍の対潜艦部隊に追い詰められ、結果的に浮上することを選んだ。
艦長は、寄港の翌日、「指揮官あるいは要員による、命令、文書、指示への違反の有無を発見することを唯一の目的とする」委員会で報告を求められた。
指揮官は「浮上によって、守秘条件に違反した」ことをを特に批判された。
つまりあの状況下では、浮上するのではなく、文書による命令に違反すべきだった。モスクワからの許可がなくても、「特殊兵器(核)」をはじめ兵器を使うべきだった、となった。
こういったことが分かったのは、42002年、危機40周年のハバナ会議で、米国防長官のマクナマラら、ソ連アルファ級潜水艦の将校ら聴衆を前にしてB-59潜水艦の特殊信号情報班チーフだったワディム・オルロフ氏が状況を語ったからだ。
追い詰められた艦内は、CO²濃度が致死的濃度に達し、当直士官が1人意識を失って次々と倒れていた。海上から落とされた訓練用爆雷が船体近くで爆発した。
艦長のサヴィツキーは、この攻撃に怒りを爆発させ、核魚雷担当士官を呼び出し、魚雷を戦闘態勢におくよう命じた。
士官のワレンティン・グリゴエビィッは、「われわれがここでひっくり返っている間に、向こうでもう戦争が始まっているらしい」「奴らを今すぐ吹き飛ばしてやる! われわれは命を落とすことになるが、奴らも全部沈めてやる--われらが海軍の名誉をけがすものか!」
特殊兵器(核)の発射は、2人の将校の同意が必要で、マスレニコフ政治将校はサヴィツキー艦長の発射命令に同意した。それぞれ、発射キーも持っていた。
だが最終的には、特殊兵器・核魚雷は発射されなかった。
もし発射されていれば、世界はどうなっただろうか?