「核抑止論」の虚構(集英社新書・豊下楢彦著)のつづきです。
ゴルバチョフは「新思考外交」を提起しながら1989年にJ・ブッシュ大統領と会談し、「冷戦」の終結を確認した。
米ソの核弾頭は、核軍拡競争で1986年に7万発だったが、2010年には2万発へと削減が進んだ。
経済、外交が行き詰まった結果だろうが、ソ連のゴルバチョフ側がまず、「一方的軍縮」に提起して踏み込んだ。
著者はこの点で、チャールズ・オズグッドが1960年に出した「段階的一方的軍縮の提案」を紹介している。
オズグッドは、「我々の現在の政策の根幹は、報復の恐怖を通じての相互抑止」であると指摘した上で、「相互抑止はそれが終わるような仕組みを持っていない」と本質的な指摘を行った。これは「精神病理的な論理」だと。
問題を相対化して冷静に見れば、「彼らがその攻撃的な態度を我々の責任にしているのとまったく同じように、我々も自らの攻撃態度を彼らの責任にしている」と。
外部の脅威を相対化し、「相互の脅威の知覚を下げること」によって軍拡競争を「逆転」させるべきと主張した。
まさにそのとおりと思う。
いま、米国は中国と軍拡競争の状態にある。
中国が経済力、技術力、軍事力でも追いついてきた現実から、米国はNATOや日本を巻き込みながら、中国包囲網をつくろうとしている。
その焦点になっているのが台湾だ。
日本は、自ら南西諸島~九州を戦場にする覚悟で、敵基地攻撃力のあるミサイル配置を進めている。
「精神病理的な論理」をそろそろ克服すべきだ。
米中、日本、ロシア、EU、すべての国とって進行中の大脅威は、気候変動であり、実際に毎年、気候災害の犠牲が出ている。
互いの真の敵、共通の利益をしっかり見据え、気候危機に協同で対処すべきだ。しかも急いで。
兵器につぎ込むカネと技術を、気候危機対策と対処に使うべきだ。
現状では、気候危機は抑止できない。対処も不可能だ。
今ならまだ、間に合うかもしれない。戦争、軍拡やっている暇はない。
