高橋杉雄氏は、防衛研究所の仕事をしているので、当然、米軍と一体の自衛隊の強化を進める立場である。
私は、軍事戦略や作戦、装備、演習など実際を学び、際限のない軍拡と滅亡の道から、軍縮へ、逆の方向に向かう立場。
安全保障び専門家にも、真の脅威が理解されていないと考える。
いまや最大の脅威は、気候危機であるのに、そこに立ち向かっていない。
兵器の開発の悪循環と訓練と紛争・戦争で膨大なCO₂を排出している。
敵は、仮想の敵国じゃない。
相手は、気候危機を共同で回避すべき仲間なのに敵対的な態度でどうするのか、と言いたい。
3章以降は「大国間競争の時代」がテーマ。
つまり覇権国の米国は、挑戦国中国の経済力、軍事技術が迫っていることに危機感を持っていて、それを食い止めようとしている。
世界的な覇権を支持しようとしている。
それを著者らは米国を中心とする「民主主義陣営」に対する中国などの「権威主義陣営」の争いと描く。
たしかに中国は中国共産党の独裁国家で言論統制も厳しいし、自由も民主主義も制限されている。
だが米国は、はたして民主主義国なのか?歴史を問う必要がある。
国際社会において、これほど他国にミサイルや爆弾を落とし、米兵を送り、膨大な人を殺戮した国はない。
表だって出てこないCIAの政権転覆、謀略活動は枚挙にいとまがない。
メディアも情報も握り国際世論をも支配し、認知戦に成功しっぱなしだ。
ドル支配の経済体制も然りで、キューバなどへの経済制裁もやりたい放題だ。
高杉氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)で中国は国家監視的と事実を指摘する一方、米国のNSAやCIAめぐるスノーデン事件を知らないはずはないだろうに。
米国は、一般市民はおろか、同盟国の指導者さえも盗聴している事実が明らかになった。
発覚後もさらに隠れたやり方で続いているだろう。
米国は国内では、一定の民主主義の体制にある。
しかしそれは権力者が付与したのではなく、主権者が権力と闘って勝ち取ったもの、闘いながら維持しているものだ。
それそれの国家単位で物事を決めるのではなく、社会の進歩は、権力者と主権者の闘いとして捉えるべきだろう。
中国で市民は、押さえつけられても「白紙」運動や「白髪」運動など、行動は起こし闘っている。
農民や元軍人だって行動を起こす時もある。
日本国民のおとなしさに、従順さに比べればはるかに闘っている。メディアは、萎縮と忖度を繰り返し、事実を国民に知らせる仕事を半ば放棄している。