サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「資本主義の次に来る世界」⑰生態系破壊産業を縮小

「資本主義の次に来る世界」のつづきです。
 大量消費を止める緊急ブレーキの5つ目は、生態系を破壊する産業を縮小することです。
 その代表例に著者ヒッケル氏があげているのが牛肉産業です。
 驚くべきことだが、世界の農地の6割近くが牛肉を生産するために使われているそうだ。
 牧草地はそうだが、飼料を育てる農地もそうで、森林破壊の原因にもなっている。
 牛肉や飼料の輸入国の国民には見えず、想像しなければ理解できないことだが。
  これを減らせば、広大な土地が森林や野生生物の生息地にもどすことができ、CO₂の排出をおさえ吸収源にもどすことができる。
 牛肉は、人間の消費カロリーの2%に過ぎないが、環境には大きな負荷をかけている。なので欧米では、肉食も多いがビーガンも増えている。
 ほかにも環境負荷を減らすために縮小できる産業や商品は少なくない。
 筆頭にあげたいのは軍事産業だ。愚かな戦争や紛争、武器の生産、化石燃料を食らう訓練なんかやめてしまえ。
 プライベートジェット、大型SUV車もそうだ。オリンピックなどのためのスタジアムもあちこち建てないで既存の施設でやればいい。
 鉄道で行ける路線の航空路の廃止、地球の裏側からCO₂を吐き出しながら大量に持ってくる食料や素材なども減らし、地産地消でやった方がいい。
 生産物を減らせば、廃棄物、ごみ処理も減らすことができる。

 そして一番減らせる大事なのは労働時間だ。
 先進国を中心に世界全体には、ムダ遣いするほど物資が有り余っているが、それはどこかで、誰かがあくせく働いている人がいるから。
 その分だけ、家族と過ごす時間が少なくなったり、体を壊すほど働いていたり、本来、感じるべき幸福を減らしている。
 労働時間の短縮は、人々のケアする時間を増やすと著者は指摘する。
 家族の看病や子どもとの遊びなどは、資本主義の下では無視され、無報酬で目に見えず、GDPには反映されない。
 これら女性が多くを担っている。その必要で大切なケア労働を男性も行い、そんな幸福時間を増やす事もできる。
 「ケアを行うことは、幸福感や意義の向上という点では、物質的な消費よりも強力であり、爆買いしている時のドーパミンよりはるかに強い幸福感をもたらす」と著者。
 労働時間の短縮をマルクスは唱えていた。今それは、①失業率の低下 ②生活の質の向上 ③環境負荷の減少の効果がある。