サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「グリーン・ニューディール」④ マルクス

 「グリーン・ニューディール」のつづきです。
 著者の明日香壽川氏は、斎藤幸平の「人新世の資本論」に、大枠賛成し、いくつかの批判的意見を展開、27年前に書かれた米本昌平氏の「地球環境問題とは何か」(岩波新書)で、マルクスへの言及について紹介している。
 それは、「すでに世界のどこかで、地球環境問題のマルクスは『資本論』に当たる本の執筆を始めているのかもしれない」との記述です。
 私は、そのよく意味が分からなかったのでその本を買って読んでみました。
f:id:adayasu:20210722103545j:plain:right  米本氏は、
 「マルクスは、19世紀的な資本主義社会の過酷さを鋭く指摘し、これによって資本の側は大きく変わった。もし、イデオロギーというものを、現体制と理論的に鋭く対立し、結果的にこれを鍛えるもの--」と解釈するならば、「飼いならさなくてはならないの暴れ馬は現代の文明そのものである」と書いている。
 また「自由主義社会と現代科学技術文明を鍛えるための対抗イデオロギーとして、地球環境問題を定立する」としている。
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 米本氏がマルクスを引き合いにする目的は、資本主義を批判してもらい、行き過ぎを修正してもらい、企業と資本主義の更なる成長をめざしているからのようだ。
 氏の執筆時の経歴は、三菱化成生命科学研究所・社会生命科学研究室長とあり、大企業のサイドから、企業と資本主義体制を鍛える立場にあるのだろうと推察してしまう。
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 どうやら米本氏は、マルクスが「物質代謝の亀裂」と表現し、「人間が自然に関わるあり方」を考察している事への理解はないようです。
 明日香氏のグリーン・ニューディールの展開が米本氏と同じような流れにあるとすれば、地球環境問題の根本的解決には至らないでしょう。
 地球環境問題は資本主義の下で、資本主義の大量生産・廃棄などの問題が繰り返し指摘されながらも、鍛えられ、無限の物質生産・廃棄へと、ますます矛盾を広げ、人類を含む生物種は6度目の絶滅へと向かうことになるだろう。