サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

人新世の資本論⑩ 人工的希少性

 「人新世の資本論」のつづきです。
 斉藤幸平氏マルクスの「本源的蓄積」についても面白い解説をしていて、ナルホドです。
 f:id:adayasu:20200916124950j:plain:w150:leftマルクスは『本源的蓄積』を単なる資本主義の『前史』としてとらえているわけではけっしてない。マルクスが指摘しているのは、モンズの解体による人工的希少性の創造こそが『本源的蓄積』の真髄であるという点である。資本主義の発展を通じて継続し、拡張する、本質的過程として『本源的蓄積』を見ている」とする。
 産業革命時代、農地の囲い込みを行って、農民から土地を奪い強制的に賃労働者を作り出した資本の蓄積を『本源的蓄積』と、私は習ったと思うので、この「希少性の創造」という視点はなかなか面白い。
 現在の社会の中で、むかしタダだった水はペットボトルとして、遠く外国からも運ばれてきて有料で売られている。土地も大都会はべらぼーに高い。しかも、投機目的で買って値上がりを待つばかりで住んでいない場合も多い。空き部屋は、あちこちにあるのに、その近くの橋の下や公園ではホームレスの人たちが寒さに震えながら住んでいる。一つの社会として、とてもおかしな現象だ。
 斉藤氏、「コモンズとは、万人にとっての『使用価値』である。万人にとって有用で、必要なだからこそ、共同体はコモンズの独占的所有を禁止し、協同的な富として管理してきた。商品化されず、したがって価格をつけることもできなかった。コモンズは人々にとって無償で、潤沢だった」
 「人工的に希少性を作り出すことができれば、市場はなんにでも価格をつけることができる」「希少性の増大が商品としての『価値』を増やすのである」
 「気候変動は水、耕作地、住居などの希少性を生み出す。希少性が増えれば、その分だけ、需要が供給を上回り、それが資本にとっては大きな利潤をあげる機会を提供する」
 そのため、気候を工学的に操作しようとするジオ・エンジニアリングなどへの資本の投資が向かい、根本的解決に至らず地球のシステムを混乱に陥らせ、さらに矛盾を拡大していくことになると警告する。
 人工的希少性として、「負債」によって引き起こされる貨幣の希少性の増大も指摘する。「無限の欲望をかきたてる資本主義のもとでの消費の過程で、人々は豊かになるどころか、借金を背負うのである。そして、負債を背負う事ことで、人々は従順な労働者として、資本主義の駒として仕えることを強制される」。その例として住宅ローンをあげる。教育関係のローンもそうだろう。
 ローンを払うために、長時間労働を強いられ、家族と食事をしたり、子どもとゆっくり過ごす時間もない人も多い。
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