サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

広瀬隆-「二酸化炭素温暖化説の崩壊」の崩壊

 AERA-広瀬隆の「二酸化炭素温暖化説の嘘が警告する地球の危機」(2019.8.21)を読んだ。なんという事か。
 最近のニュースでも、グリーンランドの融解が激しいとか、アマゾンのやシベリアの森林火災が異常だとか報道されている時に、AERA編集部がこんな主張を堂々と載せるなんて信じられない。
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 広瀬氏は、著書の「二酸化炭素温暖化説の崩壊」が、崩壊している現実をまだ受け入れきれないでいるようだ。古い話ばかりで、最近の報道さえチェックしていればすぐにわかるようなモノばかり。科学的な主張のつもりのようだが、温暖化していないと示しているグラフは古く、10年程前のもの。
 2000年頃からはじまった気温上昇の「ハイエイタス(停滞)」について、研究者は早くから海洋深層部分への熱移動だったとし、海水温の観測でも示されている。
 今年の5月のハワイの観測で二酸化炭素濃度が415PPmに上昇している事が明らかになった。これは古気候が示すところによれば300万年前までさかのぼらないと出現しない濃度である。現在、人類は毎年、化石燃料を燃やし続け、毎年320億トン以上も二酸化炭素を大気に排出しつづけている。それが海洋にも溶け込んで酸性化を進めている。これも観測されている事実だ。
 広瀬氏がそれら二酸化炭素温暖化を否定するなら、最新の観測と最先端の科学的分析を出して学術的に勝負すべきだろう。そもそも広瀬氏は気候学者でもないし海洋学者でも古気候学者でもない。
 二酸化炭素など温室効果ガスにより気温上昇が起こるのは科学的事実だ。二酸化炭素濃度の上昇により気温への応答の強弱は様々あるが、温度上昇は事実であり、今年の6月と7月の世界平均気温上昇が観測史上最高となった。大気にとどまらず、大気の1000倍の熱量を持つ海洋の温暖化も進んでいる。
 最新の観測では産業革命以来、全球温度が1.2℃程上昇しているとされ、北極海の海氷面積の縮小が今年過去2番目に小さくなり、グリーンランドが猛烈に融解しているのも観測されているのが事実だ。
 広瀬氏は、南極の氷床が増大していると書いているが、観測しているのか?。それは10年前の一部の学者の主張だ。今の研究者は人工衛星を使って質量測定をし研究結果を発表している。知らないのか、といいたい。
 南極も近年では、温暖化の結果、西南極の海氷は大きく減っているし、東南極の一部で氷床が増大しつつも、衛星の観測では全体の質量は東南極でも南極全体でも減っている事が示されている。
海面上昇も熱膨張も含め、年3ミリ以上が観測されている。
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 これほど今日の観測にもとづく証明がされているにも関わらず、10年まえの自分の浅はかな考えに依拠し、最新の科学的な観測や証明を無視するとは驚くべき態度だ。
 IPCCを詐欺集団としている広瀬氏は、気候学者なのか?観測しているのか?説得力のある論文をどれほど書いているのか?
 全く科学的でないこんな広瀬氏の主張をアエラが堂々と載せる感覚が信じられない。多くの批判を招くのは覚悟の上だろうか。危機的な状況が進行しつつある地球温暖化・気候変動への対策を、浅はかな論拠で後退させる役割を担ったとして記録されるべきだろう。
 広瀬氏らの脱原発についての主張には正当性があったが、原発推進論者への機械的反発から「温暖化」懐疑派になっているのは極めて残念なことだ。電力会社が利益増、原発推進のため温暖化対策を理由にし、同じ電力会社が石炭火発で利益をあげるため温暖化懐疑派を育てた。企業の儲け本位、すっかり乗せられ、全く愚かな事だ。
 しかしこれは、地球変動への人類の対応が手遅れになりつつある今、極めて重大な事だ。