サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

コロナ緊急事態の五輪強行

 昨日、東京五輪の開会式が行われた。
 五輪史上、異例も異例、コロナパンデミックの下、無観客、医療崩壊が迫り、国民の多くが中止・延期を求める中で強行された。
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 各紙の今日の1面です。
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 「朝日」1面の記事で、「熱戦の隣 鳴りやまぬ救急電話」の記事は鋭かった。「読売」は政権広報紙らしく1面全面写真。
 男子サッカーの試合が行われた隣の五輪指定病院、横浜労災病院では、コロナ患者の急増に加え、熱中症などの救急患者が運ばれ、対応に苦慮する状況をリアルに取材してた。
 また、下のように海外の報道についても紹介し、参考になった。
news.yahoo.co.jp

 「読売」社説は、開会式演出担当者が直前になって解任されたことなど、数々のドタバタ問題はあげながらも、当事者の責任については言及せず、「苦境でも輝く選手に声援を」として、菅政権と電通の狙いどおりに、手際よくまとめている。しかし国民が一番心配し、実害となってきているコロナの医療崩壊の危機については、言及を上手に避けている。読者の反応は?
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 最悪なのは、選手村での感染拡大だ。初歩的な対策も取られていないなかで、感染が127人(7/24)を突破し、拡大中。このままでは、隔離したはずのバブルの中でクラスターさえ発生しかねず、競技どころか、選手の健康と命さえ脅かしかねない事態だ。
www.yomiuri.co.jp
 更に懸念されるのは、大会後、選手や大会関係者やメディア関係者が自国に戻り、ウイルスを拡散しかねない事だ。
 それらを防ぐ責任は、五輪を強行してきた菅自公政権小池都政、JOCが持たなければならない。その責任を明確にしながら、強い感染拡大防止、医療関係や飲食業など、負担を強いているところへの補償も行うべきだ。

江守正多・飯田哲也・斎藤幸平-人新世を語る

f:id:adayasu:20210723223007j:plain 江守正多さんと飯田哲也さんと斎藤幸平さんの対談です。
 この組み合わせはスゴイことです。
 そして話題の中心が「脱成長」です。
  意外や意外、意外と「脱成長」は、かなり受け入れられています。その内容のアップデートを求める。
 グリーン・ニューディールが最良へと向かうように。
 若いメンバーが進めています。どうぞご覧ください。
 

www.youtube.com

「地球環境問題とは何か」J・ハンセン証言

 昨日紹介した米本昌平氏の「地球環境問題とは何か」(岩波新書)について、追加で書いておきたい。
f:id:adayasu:20210722103545j:plain:right 1994年、27年前に書かれている本ですが、科学ものではあるので、時を経た現在から見て、修正することはいっぱいあるようだが、さて現在の、著者の思いはいかがだろうか?
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 私が地球環境問題に関心を持つきっかけになったNASAのジェームズ・ハンセン氏の議会証言について、かなり批判的に書いている。
 1988年米議会でのハンセン氏の証言が、「99%の確かさ」で温暖化が進んでいると、非専門家である議会関係者を煽ったこと。専門家としては、研究を専門誌に投稿して、議論をたたかわせ、一定の評価の上で議会で証言すべきであること。また、ハンセン氏らのシュミレーションのコンピューターモデルが粗く限界があること、などを批判的に指摘している。
 だが現在、進行している止めようもない温暖化、気候変動を、米本氏は過去を振り返ってどう?総括するだろうか?。
 特に「99%の確かさ」は、当時、ハンセン氏が踏み込んだ言葉だったかもしれない、しかし現在、99%を否定する学者は、いつの間にか声が小さくなった「懐疑派」しかいない。
 ハンセン氏は、化石企業らからの金による妨害で、研究活動や発言のひどい妨害を受けてきた。
 私が、ティッピングポイントという言葉初めて聞いたのは、テレビでのハンセン氏の言葉だった。
 元に戻らない温暖化の劇的な転換地点、その悪循環は、北極海の海氷の縮小や永久凍土融解などのメタンの排出、南極などの棚氷の崩壊など、巨大な、止めようもない現実として進行している。

「グリーン・ニューディール」④ マルクス

 「グリーン・ニューディール」のつづきです。
 著者の明日香壽川氏は、斎藤幸平の「人新世の資本論」に、大枠賛成し、いくつかの批判的意見を展開、27年前に書かれた米本昌平氏の「地球環境問題とは何か」(岩波新書)で、マルクスへの言及について紹介している。
 それは、「すでに世界のどこかで、地球環境問題のマルクスは『資本論』に当たる本の執筆を始めているのかもしれない」との記述です。
 私は、そのよく意味が分からなかったのでその本を買って読んでみました。
f:id:adayasu:20210722103545j:plain:right  米本氏は、
 「マルクスは、19世紀的な資本主義社会の過酷さを鋭く指摘し、これによって資本の側は大きく変わった。もし、イデオロギーというものを、現体制と理論的に鋭く対立し、結果的にこれを鍛えるもの--」と解釈するならば、「飼いならさなくてはならないの暴れ馬は現代の文明そのものである」と書いている。
 また「自由主義社会と現代科学技術文明を鍛えるための対抗イデオロギーとして、地球環境問題を定立する」としている。
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 米本氏がマルクスを引き合いにする目的は、資本主義を批判してもらい、行き過ぎを修正してもらい、企業と資本主義の更なる成長をめざしているからのようだ。
 氏の執筆時の経歴は、三菱化成生命科学研究所・社会生命科学研究室長とあり、大企業のサイドから、企業と資本主義体制を鍛える立場にあるのだろうと推察してしまう。
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 どうやら米本氏は、マルクスが「物質代謝の亀裂」と表現し、「人間が自然に関わるあり方」を考察している事への理解はないようです。
 明日香氏のグリーン・ニューディールの展開が米本氏と同じような流れにあるとすれば、地球環境問題の根本的解決には至らないでしょう。
 地球環境問題は資本主義の下で、資本主義の大量生産・廃棄などの問題が繰り返し指摘されながらも、鍛えられ、無限の物質生産・廃棄へと、ますます矛盾を広げ、人類を含む生物種は6度目の絶滅へと向かうことになるだろう。

斎藤幸平(経済思想研究者)×小川淳也(衆議院議員)の対談

 斎藤幸平(経済思想研究者)氏と小川淳也衆議院議員)の対談動画です。
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 斎藤幸平氏と大井赤亥氏の対談
www.youtube.com

ワクチンQ&A

 新型コロナウイルスのデルタ株の感染が拡大しています。オリンピックの開催強行で、東京から地方へと、さらに感染爆発しそうな勢いです。
 菅政権の計算違い? 情報隠しの影響で、ワクチン供給が急に不足し混乱しています。
 ワクチンについては、様々な情報があふれかえる中で、誤解や偏見、場合によって過信もあるかもしれません。
  7/18日付けの「赤旗」日曜版はわかりやすいです。
 日本感染症学会ワクチン委員会委員長の西順一郎鹿児島大学医学部教授)さんが疑問に答え解説しています。
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環境革命の虚実」②サーキュリー・エコノミー

 環境革命の虚実」の続きです。
f:id:adayasu:20210718193346j:plain:left 「『グリーン経済成長』に向けて企業と国がなすべきこと」と題した、高村ゆかり東大教授と沖大幹東大教授の対談が載っている。
 遅れている日本がEUや中国に追いつくうえでは、参考になる内容かもしれないが、経済成長を本質とする資本主義のもとでは、結局、地球環境問題の根本的な解決にはつながらないだろう。
 また、村上陽一郎東大名誉教授の「感染症戦線と『3.11』後の原子力」-の論考も、原発は「つなぎ」などと、いろいろ並べていても結局は、原発推進のための言い訳だろう。
 東京財団政策研究所研究員の平沼光の「資源エネルギー覇権競争に大転換が始 まった」は、EUなどで進むサーキュラー・エコノミー(CE)紹介していて、参考になった。
 CEは、資源循環モデルで、採鉱⇒資産⇒廃棄物管理⇒廃棄物⇒⇒資源再生⇒再生資源⇒生産、という循環で、資源を循環させる経済。EUではこの経済モデルで世界をリードしようとしている。
 エネルギーも当然、再エネ省エネ。
 他国が掘り出す天然資源よりも、自国の廃棄物から資源再生されるレアアースなどが価値を持つようになる。
 例えば金は、6800トンが都市鉱山として日本国内に蓄積されており、世界の埋蔵量42,000の16%に匹敵するそうだ。なるほど。
 これで闇雲に経済成長を目指さないならば最終的には、「定常経済」で「脱経済成長」の一種ということではないだろうか。