サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

中国「軍事強国」への夢」⑩台湾海峡封鎖シナリオ

 中国「軍事強国」への夢」の続きですが、これで終わります。
 文春2月号に「台湾『2025海上封鎖』」シナリオと題する論文が載っている。
 中国「軍事強国」への夢」の監訳者・峯村健司キャノングローバル戦略研主任が台湾戦争の可能性について書いたものだ。
 峯村氏は、中国人民解放軍を長期に取材・研究している。まず、中国軍は台湾侵攻と同時に尖閣を攻撃するシナリオは低いという。
 日本では尖閣に中国が攻めてくると盛んに煽られているが峯村氏は、それを否定。当然だろう。中国はできるだけ日本を巻き込みたくないし、尖閣上陸に戦略的意味はないから。これは田岡氏らも主張している。
 中国としては、可能な限り米軍を介入させない方法を取るだろう。日本の自衛隊は、米軍の判断しだいで動きは決まる。
 
 峯村氏のシナリオの一つは、トランプが大領領に返り咲いた場合だ。
 トランプ氏が大統領になったら就任演説で、「これまでわが国の基本方針だった『一つの中国』政策と『戦略的曖昧性』の見直しにも着手する」と言うだろうと想定する。
 その後、米国が台湾への武器援助を表明したり、中国側が全人代で「一つの中国」原則を法制化するなど、対立のエスカレーションシナリオはすすむ。
  その後、中国は東シナ海から台湾海峡バシー海峡まで計14カ所で実弾射撃訓練を14日間行い、あわせて台湾海峡を通過する船舶の「海上臨検」を行うと発表。
 これに対し、台湾は中国の「臨検」を違法かつ不当とし。自衛権の発動を米国や友好国に支援を求める。
 中国による「臨検」と軍事演習で台湾の物流は、ほぼ遮断され、コンテナターミナルも使えなくなる。
 台湾の食糧自給率は30%ほど、発電用のLNGの備蓄は14日分、原油備蓄も90日分しかない。
 合わせて中国は、インフラ施設へのサイバー攻撃を行い市民生活が混乱、住民不安が増す。
 台湾は極端なエネルギー不足、食料、生活必需品不足に陥る。

 演習では、「空母キラー」のDF21はじめ様々なミサイル台湾周辺や西太平洋に打ち込む。
 また台湾の港周辺に機雷を敷設し、港への船舶の出入りをストップさせる。
 中国は、窮地に陥った台湾住民の「人道回廊」を認める代わりに「統一」に向けた対話を条件として示し、台湾との「統一協議」を開始する。
 こんなシナリオだが、米軍がどうでるか?その指揮によって自衛隊がどう動くのか? 
 峯村氏は、CSISのにゅみレーションでは、嘉手納、岩国など、在日米軍の出動が前提になっているが、台湾有事で在日米軍基地をあてにできるかわからない、とする。
 また、平和団体などが米軍基地を封鎖する座り込みなどをしたり、ドローンやバルーンで離発着を妨害する可能性もあるとする。
 さらに、米軍出動に関し、日米政府の事前協議がある事も指摘する。
 そこは峯村氏、本音は語っていない気がする。
 トランプだろうと、バイデンだろうと、日本政府の主権はないと同じだ。
 メディアも米国と日本政府の動きに応じて、また先んじて報道を繰り返すだろう。
 自民党政権がどうだろうと、主権者国民が事実に基づく情報を得て、自ら判断する事が重要だ。
 南西諸島・沖縄・九州・全国を巻き込む戦場となり、住民犠牲も許すのかどうか?
 主要メディアは、事実を報道しない。知る主体は主権者。
 シナリオには、アセアンの動きが考慮されていない。バシー海峡の対岸のフィリピンの動きは重要だろう。

 敵は、国家や人間ではない。自然からの反逆が強烈で、元には戻らない事態になりつつある。
 脅威である海面上昇は止まらないし、強烈な台風も襲来するだろうから、海軍基地も岸壁のかさ上げが必要となるだろう。