サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

惑星の物質代謝の亀裂③ 気候変動

 「大洪水の前に」-斎藤幸平著は5章まで読み終えましたが、やはりむずかしい。
 でも、なんとなく、マルクスの晩年に向けての研究の方向が理解できてうれしいところです。
 環境問題の関連でマルクスは、初期の頃、疎外論を「労働の疎外」にとどまらず、「自然の疎外」にまで広げている。斎藤幸平さんはこの本では、順をおってマルクスの環境論を展開していますが、スッ飛ばして5章の最後の部分を紹介します。
f:id:adayasu:20200604192534j:plain:w200:right マルクスが晩年に近いころは自然科学や農業問題の研究に時間を割いて抜粋ノートなどを残しています。リービッヒとフラースという農学者の当時の最新研究や論争を読み進め、自然環境破壊問題に接近していたことは驚きです。
「地域における森林伐採は、とりわけ地域が非常に乾燥した、砂室の土壌からなり、あるいは、さらに、石灰質の土壌からなる場合には、気温を上げる顕著な原因として数えられる。---土壌の性状が降水量を制約するのであり、そのことから、ここで言われている気候上の影響が生じるのは自明である。植生に覆われた、つまり、樹木が生い茂った地域は、不毛な地域よりも、湿度をよりしっかりと保ち、太陽光によって熱せられることより少ない。こうして、樹木が生い茂った地域は降雨もより多く吸収し、それゆえ、その地域自身が涼しいだけでなく、周辺の暑い領域にも爽快な涼しい空気の流れを広める。気温と地表物質の様々な熱電動力が大気中の蒸気の分散をまったくもって変えるのである」(MEGA IV/18:622)と、」フラースの記述を自分のノートに書き込んでいる。
 フラースは、森林伐採などで、気候が変わり降雨が少なくなったことで栄養塩の補充が少なくなり農地にダメになり文明が荒廃していったことなどを研究してた。持続可能な農地や森林と気候変動など、現在に通じる問題提起が早くからなされていた。今は熱帯雨林の伐採・農地化、資源開発、森林火災など、一つの文明の消滅程度ではなく、人類全体の絶滅の危機にまで進行中だ。