サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「希望の歴史」Humankind⑨ コモンズの悲劇

 Humankindの続きです。


 著者のブレグマンは、小学4年の時に学校で、「それぞれの能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」という共産主義の原理を教わった。
 しかし実際に「共産主義」といわれるものは、旧ソ連にしろ、今の中国にしろ、先制支配の国家される。
 当時10才だったブレグマン少年の思いは、「警察国家、エリート支配体制だけを理由に失敗とみなされるのはおかしいと思ったみだいだ。

 「日常の共産主義」って言葉があるようだ。経済活動の大部分は共産主義モデルとして動いている。
 食卓で「塩をとって‥‥」「〇〇をとってちょうだい」というと、家族だって友人だって無料でとってくれる。
 公園や音楽、物語など、誰のものかを気にせず、多くを共有している。
 道を尋ねた人からお金を請求されたことはないし、重い荷物を持っている人を手伝ってあげたり、エレベーターで行き先の階を押してあげたり、日常的に協同(ラテン語:コミュニズム)している。内なる共産主義ともいうらしい。
 人類史の大半は、コモンズの歴史だった。
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 コモンズという概念は、ギャレット・ハーディンの論文によって広がった。ハーディンが書いた論文「コモンズの悲劇」は、地球環境を守るための本ではよく紹介されていて、私もそう認識していた。
 ハーディンは、共有地で多くの人は羊を飼おうとし、共有地が崩壊するというもの。
 しかしハーディンが主張したことは、飢餓に苦しむエチオピア食料援助をすれば、子どもが増え食料はさらに不足すると否定した。
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 コモンズ研究で、女性初のノーベル賞を受賞したエリノア・オストロムは、ハーディンが見落とした欠点を見つけた。それは、話し合うといこと。
 農民や漁民や隣人は、草原が荒れたり、井戸が干しあがったりするのを防ぐため、話し合って解決してきた。オストロムは、スイスの共有牧草地、日本の耕作地、フィリピンの共同灌漑、ネパールの貯水池などを調べてみると、コモンズの悲劇は起きていなかった。確かにそうだ。棚田では水を上から下まで共有する。水が共有物なので、用水路も共有。
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 (写真 ウィキペディアより⇒タイ東北地方のコモンズ。牛飼いは、脇道に生えている草を牛に食ませる。ローカル・コモンズを利用し管理する現地住民は、草の根民活として評価できる)
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 ただ、地球環境の悪化、気候危機の進行で、地球のコモンズは悲劇へと進んでいる。それも確実に。残された時間は少ない。
 古来より、問題を解決してきたように、話あい、解決する努力こそ急がれる。
 COP27は成功したかには見えないが、話し合い、解決へ実行を急ぐこと。これ以外ない。悲観している場合ではない。
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ja.wikipedia.org
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 生物学者だったハーディンはマルサス主義者で、悲観主義者だっがかもしれない。晩年、妻と自殺している。