サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

環境と成長 両立できる?

 今日の「朝日」です。たいへん良い議論企画ですね。
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 グリーン・ニューディール(GN)で環境対策と経済成長をめざす。世界の流れです。
 しかし、「それでは脱炭素は間に合わない」と「脱成長」を主張する斎藤幸平氏
 「脱成長をいう前に、やるべきことがある」として、GNをめざす明日香寿川氏。
 地球環境を守り回復させたいとの強い思いは同じ。だから、方向性をめぐってバンバン議論してほしいし、市民も議論に参加してほしい。一つの意見しか載せないのは、よりよい方向に到達できない。
 せっかくなので、少し引用して紹介します。

  <明日香寿川の主張>
再生可能エネルギーが安くなり、エネルギー転換が理想論や精神論でなくなった。
*成長か脱成長かという話になると、人によって定義が異なり、議論が発散して、結局なにも変わらない
*具体的な提案がなく、多くの人はよくわからない。
*先進国に住む人たちの過剰消費は問題だ。しかし、温暖化対策のために脱成長するとしても、いつ誰が何をどれだけやればいいのか。CO₂排出はどれだけ減るのか。具体的提案がなく、多くの人はよくわからない。
*環境規制の提言は、何十年も前から行われてきたが実現しない。経済を重視する国民全体の支持もないからだ。人間の欲望をコントロールするという難しい問題もある。歴史や人間の本質から学ぶなら、気候対策としてだけでなく、雇用確保やエネルギーコスト低下、そして経済成長につながると言った方が、政策実現の可能性はより高まる。
*脱成長が必要な分野がある一方で、成長が必要な分野もあり、具体的な政策を含めたもう少し丁寧な議論が必要ではないか。
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  <斎藤幸平の主張>
*小手先の対応でグリーン政策による経済成長をめざし、浪費型社会を続けるのか、取り返しのつかないほど人類が地球環境を変えてしまった状況を反省し、別の経済のあり方をめざすのか、大きな分岐点。
*経済規模が大きくなるほど多くの資源とエネルギーを使う。浪費的な社会のあり方が続く限り、脱炭素への困難さは増す。再エネ、省エネはもちろんだが、消費のあり方、働き方、商品の種類を変えていくことが必要だ。
*資本主義の本質は資本を増やすこと、経済成長を求め続けることだ。それが膨大な無駄を生み、気候変動を解決する足かせになっている。鉄道で2時間半で行ける東京---大阪などは飛行機は飛ばさない。これは市場に任せていては絶対にできない。危機感を持った社会が市場に対して命じなければ実現できない。
*電気自動車をたくさん造り、新たな需要を喚起すれば雇用も生まれるという成長モデル。それで救われるのは先進国の重工業だけだ。レアメタルなど資源採掘の需要が高まれば、途上国の人々の暮らしや自然は破壊される可能性がある。
*成長なきグリーン・ニューディール。技術革新は起こすが、つくる車の台数は増やさない。代わりに人々の労働時間は減らしていく。短く働く社会に転換する。
*有限の地球環境で無限の経済成長はできない現実を受け止めるべき。この間、成長をめざした必死の改革で格差は拡大し、幸福度は下がった。
*生きていくために不可欠な、教育や介護、保育のようなエッセンシャルな分野で利潤を求める必要はない。成長を前提にせずに、人々の基本的なニーズは満たされる社会を構想する必要がある。
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 なかなか面白い。どちらも参考になる。
 現状をみると、どちらも実現性は乏しい気がして不安になる。それほど事態は時間的に深刻だ。市民的、世界的な議論を急いで進める必要がある。
 明日香さんの「間の欲望をコントロールするという難しい問題もある。歴史や人間の本質から学ぶなら」、これがとても大事ですね。それが何なのか?明日香さんにとっても、斎藤さんにとっても。私たちにとっても。
 地球環境問題はかなりまえから指摘され、会議も開かれ、技術も開発されてきた、でも惑星全体を見れば負荷が止まらない現状がある。
 人間って、なんだろ。

 私としては「有限の地球で無限の経済成長はできない」の立場。
 惑星・地球破壊の人間社会システムを転換しないと未来はない。