デンマーク産のエビは洗浄のためにモロッコに運ばれ、デンマークに戻され袋詰めされたあと、世界に流通する
スコットランド産のアカエビは、近年まで現地の工場で皮むきされていたが、タイに輸送され、手作業で皮むきされている。
毎日、4000台のトラックがフランスのピレネー山脈の峠を越えて、アンダルシア産のトマトをオランダに輸送している。同時にハウス栽培のオランダ産のトマトが、アンダルシア地方へと運ばれている。
単に、欲のために、また金をかせぐために---。
グローバル経済社会は、生態系や地球への負荷は考慮されず、経済成長として追及されている。
日本でも、冬にビニールハウスで石油を燃やして、メロンやスイカを作って、暖房の必要な頃から食べる。あるいは、夏の野菜や果物を、地球の反対側の冬の南半球に輸出して、暖房下した部屋で食べる。
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人と物の輸送のためにヨーロッパでは、新しいトンネル、高速道路、TGV、線路を建設する計画が進んでいる。
これらの建設や輸送のために、どれほどの環境負荷がかかる事か。経済成長とグローバリゼーションは一体不可分だ。
地球環境への負荷、コストが商品取引でに加えられていない。これらはあとの世代につけとして回される。
ロバート・E・エーンという人が「市場民主主義における幸福感の喪失」という本で、主観的幸福について考察している。
そこでは、米国が生活の物質水準が向上するにともない、国民の大多数が実際の幸福感は低下していると結論づけている。
英国のNGOは生活の満足度に関する世論調査、平均寿命、エコロジカル・フットプリントを組み合わせて、幸福度指数を作成している。そこでは、バヌアツ、コロンビア、コスタリカがベスト3で、ドイツ81位、フランス131位、米国は150位だった(2006年)。
「経済発展した」社会が大量生産・廃棄の上に成立している事実、価値の喪失、商品の質の劣化の全般化、「使い捨て」社会の加速化が商品をゴミに変えている。
そして労働者も使い捨てが横行している。
排除されたり解雇されたりする人間の全般化、ホームレス、浮浪者、経済成長社会が社会的な退廃招いている。
脱成長の「節度ある豊かな社会」--自己制御、分かち合い、贈与の精神、自立共生を基盤とする社会へ、グローバリゼーションから、再ローカリゼーションへの移行が必要だ。
セルジュ・ラトーシュ著の「脱成長」から前回に続きでした。