サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「『人新世』と唯物史観」を読んで①

 月刊誌「経済」の11・12月号(上下)に経済研究者の友寄英隆氏が「人新世」と唯物史観—と出した論考(研究ノート)を載せている。
 興味があり読んでみたので、素人ながら感想を書いてみたい。
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 友寄氏は、ヨハン・ロックストローム氏などが提唱しているプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)やIGBP(地球圏・生物圏国際研究)が打ち出している人類活動の巨大な「加速」について、仮説として紹介している。
 しかしこれは単なる仮説ではない。人類が回避行動をしなければ、確実に人類は絶滅の危機に直面する現実は、科学的に説明されている。このことに現実的な危機を感じていないのが、この論考に通底している友寄氏の根本的な問題だと思う。
 米国の惑星科学研のD・グリーンスプーン氏の考察を、「『人新世』で議論されている地球的危機を人類が克服したならば、人類は『人新世』よりもさらにグレードアップした新しい10億年単位の『代』--『知生代』の扉が開かれるだろう」と紹介し、「唯物史観の立場から『人新世』について考えるうえでも、一定の示唆的な意味を持っている」と述べる。 
人類があと30年でカーボンゼロを実現しないと恐ろしいことになると危機感を燃やしている時に、10億年単位の話ですか?と驚く。
 これらからみると友寄氏の考えは、人類はやがて簡単に地球環境問題を克服し、新しい時代を実現できると考えているようだ。とても楽観的だが、根拠は示されていない。
 今、直視すべきは、地球温暖化の進行だ。もう30年も前からIPCCを中心に議論され温暖化対策が取り組まれてきている。しかしまだ、温室効果ガス排出を拡大しつづけ、現状では各国が困難な削減目標を達成したとしても、今世紀中に産業革命以後、2.7℃の上昇に到達すると科学者は警告している。
 そしてそれで、ピークアウトできる保障はない。 ティッピングポイント(臨界点)を超え、地球自身による温暖化の暴走は起きる可能性が強く警告されている。海面上昇は数千年続くとされている。さらには現在、大量の生物種が絶滅しているが、温暖化や海洋酸性化でその絶滅速度は加速する。これら生態系の破壊は、水や食料危機問題として現れる。すでに始まっているこの人類的な危機状態には、危機にふさわしい行動をしなければならないが、友寄氏は危機感もなければ対策についても語っていない。
 その楽観論の根拠は、友寄氏のいう「唯物史観」にあるようだ。
  結論として、
①地球史を人類史に共通する「進化と発展」の観点が重要であること
②「人類史:前史」と「人類史:本史」に分けて考察することが不可欠
③「人新世」の時代でも唯物史観の基本命題は貫かれていること
 人類史が「前史」から「本史」へと「進化・発展」するという視点を持たないならば、人類史を解明するための唯物史観の命題が、地質学的な自然史のための時代区分に埋没してしまう危険がある」とする。
 つまり唯物史観者に対し、人類の進化・発展はゆるぎないのであり、「人新世」の言葉が出てきたからと言って動揺しないように再確認したいかのようだ。
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では、また明日。