サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「脱資本主義を考える」

f:id:adayasu:20200604192534j:plain:w160:right 斎藤幸平氏の「人新世の資本論」に他方面から批判や意見が出ていて面白い。
 右翼的な妄言は価値がないので無視しておいて、同じマルクス主義者からの批判は、いろいろ参考になるし、議論の発展に期待している。これに斎藤氏が意見を書いたり反論してくれると、なお勉強になる。
 下の論考。
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news.yahoo.co.jp
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 ノルド社会環境研究所・循環型社会研究会代表の久米谷 弘光の論考で、なかなか面白い感じで勉強になった。
 久米谷氏は、マルクス主義研究者の浅野慎一氏が「人新世の資本論」について、ローマクラブ(成長の限界)など、新マルサス主義とほぼ同じとの批判を紹介している。(浅野氏のその批判内容を知りたいが検索しても見当たらない)
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 これについて久米田谷弘光氏は、浅野氏がローマクラブの「成長の限界」などの研究成果を「新マルサス主義」だとして切り捨てている点には異論がある、としながら、斎藤氏の『脱成長コミュニズム』が、新マルサス主義とマルクス主義が接ぎ木され、『人新世の「資本論」』40万部という花を咲かせたのである、と決めつけている。
 これはマルクス主義者の双方の立場を、際立たせることを、ただただ喜んでいるだけに見える。
 本が売れている理由の説明にもなっていない。せっかく大事なポイントなので、双方の論点をもっと掘り下げてもらえばいいものを、もったいない。
 久米谷氏は、「資本主義の終焉」のイメージについて4点、方向として3点あげ、「挟み撃ち」論を展開している。私もそれには賛成ではある。
 だが肝心なところが抜けている。
 真っ先に地球環境の回復をあげなければならないはずなのに、これがない。
 これに関心はなくて、資本主義の終焉には、関心があるようだ。
 現状のまま推移すれば、資本主義の終焉の前に、地球環境がティッピングポイントを超え破壊の連鎖が進み、人類は絶滅の危機に瀕すると、科学者から繰り返し、警告がなされている。
 せっかく1ページ目に気候危機問題への展開があったのに残念。この感覚は、旧来のマルクス主義者に多いような気がする。
 私は斎藤氏はどちらかと言えば、人類が直面する緊急かつ最大の問題、地球環境問題の解決の方策を、マルクスの立場から論じているように感じている。資本主義は、商品生産・利潤追求、したがって生産至上主義、大量廃棄・環境負荷が本質で宿命なので、その転換を求めている。生産力の問題は、生産の質、生産性として、量としての成長ではなく、質的な発展と捉えることもできると思う。
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 「脱資本主義を考える」がテーマだが、資本主義から脱する最大の課題は、まず地球環境破壊を止めることにある。
 このままでは、資本主義は最後まで生き延び、人類自身の地球環境の破壊によって、多様な生物種の絶滅、そして人類の絶滅的状態とともに資本主義も終わかねない、そんな状況だ。
 プラネタリーバウンダリー(惑星の限界・境界)内に、人類活動を早急に納める事ができるなら、資本主義でも社会主義でもコモン型社会でも、とりあえず構わない。
 大量生産・廃棄社会を止めること、地球システムを回復する事(格差と貧困解決と一体)こそ。