片づけ中に、「税の行方 ヒツジたちの沈黙」なる、「朝日」(田中季広特別編集員)のコピーで出てきた。(16.2.28付)
蛍光線なしだったので読んでいなかったかと思い、赤ボールペン片手に読んでみた。
実は記憶がよみがえったので読んでいたが、なかなか面白かった。
というのも私は、先の参院選で目前の消費税増税に国民がほとんど反発しないことが不思議でたまらなく、「世界にこんな国ってあるのか?」と理由を知りたいと思っていたから。
田中氏の書き出しふるっていて、
「納税に感謝します~。あなたが昨年支払った税金2万豪ドル(160万円)の使途は次の通りです。
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福祉 7356豪ドル
防衛 1642豪ドル
教育 1636豪ドル
国の借金は3200豪ドル~
と、オーストラリアの納税者には年1回、政府から税金受取証が送られる、そうだ。
オーストラリアの納税者は、新税や増税の話には敏感で、日本の消費税にあたる物品サービス税の引き上げには世論の8割が反対するらしい。
どこの国でもそれが当然と思う。日本でも、消費税の3%導入時、5%引き上げ時は、日本列島騒然という風に反対運動が巻き起こったものだ。しかし、前回の8%への増税、今回予定の10%増税には、あきらめ感が先行しているからか、社会から強い反発はほとんど出てこない。
中曽根康弘元総理が「税の極意は、羊がメェーと鳴かないように、少しずつ毛を抜いていくことにある」と発言した事があるが、税の極意が浸透し、主権者であり納税者である国民は「メエー」と鳴かないようだ。
毛を抜かれている国民は、痛みに耐えて? 痛みに慣れて? あきらめガマンしているようだ。ガマンが蓄積すれば爆発しやすい。それは増税おしつけ者、強い者には向かわず、そんな勇気はないので、弱いものに向かう。つまりいじめの構図。
「朝日」の コピーに裏側には「熊日」の「論壇」があり中島岳志教授(当時北大院准教)の「報道を自主規制させる『空気』」が載っていて、示唆的だった。
中島氏は、安倍政権がテレビ局に「停波」をチラつかせて、報道各社に、自主規制、忖度させる目的を果たした事を書いている。
その中で山本七平の「空気の研究」ー沖縄へ特攻出撃して撃沈された「戦艦大和の出撃などは、〝空気”決定のほんの一例にすぎず、太平洋戦争そのものが、否、その前の日華事変の発端と対処の仕方が、すべて〝空気”決定なのである」を紹介して、今の政治・社会に通じる国民の気分感情を示している。
山本七平の「空気の研究」の中には、「水の研究」なるものも書いているようで、いわゆる「水をさす」事が大事と。
全体が同調圧力の下、「空気」に流されていくとき、モノを言う-「水を差す」事が重要だという事だ。
この役割は学者やメディア関係者により求められる。同時に主権者一人ひとり、また市民の運動としても大事である。
アンデルセンの童話-「裸の王様」で、「王様は裸だ」と叫ぶ、子どもの役割が大事というわけだ。
だが、子どもでなくでも、不利益を覚悟で「王様は裸」だと叫ぶ大人も少なくはない。大人こそ勇気示すべきだろう。
わたしも。