娘へ
さちこ、おめでとう。多くの人に喜ばれ、とても良い結婚式だった。
夏は海に行き、春は川でキャンプをし、冬は阿蘇にソリを持って出かけた。庭での普段の遊びは、これまた、かけがえのない日常だった。
私たち夫婦にとって、あなたたち3人の子育ては実に楽しく、おもしろいものだった。その頃も、そして思い出となった今では特に。
あなたたちは、色々と問題を発生させて、私たちにその解決力を求め、夫婦とあなたたちとのコミュニケーションを高めてくれた。
ありがとう。私たち夫婦を育て、成長させてくれたのは、あなたたちだ。
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さて結婚について、憲法には、こんな事が書いてある。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
当たり前のことだが、このことの本当の意味を理解するには、そうでなかった時代のことを知る必要がある。
女性には一切の権利がなく、男性に服従を強いられる社会だった。戦争の時は、喜んだふりをして、夫も子どもも戦争に差し出さなければならず、涙を流すことさえ許されなかった時代があった。わずか70年前のことだ。
もうひとつ、憲法には、
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。そして第九十七条 にも 「〜基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて〜」とあり、人権も自由も、獲得の努力を促している。
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いま、憲法は傷つけられ、死にかけている。
その憲法は、あなたたちのような幸せを味合うことなく、若くして死に、殺し殺されるしかなかった、国内、国外の多くの不幸を二度とくり返さない誓いとしてつくられた。
わたしたち夫婦は、今こそ自由獲得の不断の努力を最大限やるべき時と思っている。また多くの若者やパパママや学者や一般市民がその思いで行動している。
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でもこれは苦しい事ばかりではない。主権を行使する主権者として、わたしたち夫婦が体験した子育てと同じように、楽しく、おもしろく、賢くなり、強くなり、力を合わせることの幸せを実感することと思う。
夫婦、家庭の幸せとともに、それを包む社会の主権者としての幸せも、ぜひ体現してほしい。おめでとう。T夫さんおめでとう。
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2015.9.21 父・安人、母・純子より