サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

砂川判決と田中最高裁長官と日米政府


 今回の安保法制・戦争法案は、4月に安倍首相が米国に行って約束したように、米国の対外戦略、軍事戦略と切り離せません。
 これには歴史的な経過を引継ぐもので、砂川事件・伊達判決・最高裁判決のオモテもウラも主権者・国民が良く肝に銘じるべき事件です。
権力とは何か?それに翻弄される主権者でいいのか?を問うものです。
 しかし今回、砂川判決は報道されても、この最高裁長官と日米政府がやった主権者を愚弄する行為は、何故かまともに報道されていません。ので、
 59年の砂川事件・伊達判決 米軍違憲判決後の米の圧力 最高裁にまで手をのばす(2008.4.30「赤旗」)から引用し紹介します。
 マッカーサー駐米大使の秘密文書が生々しい。今もこんな感じでやられているかも…

砂川事件・伊達判決に関する  米政府の解禁文書(抜粋)

 国際問題研究者の新原昭治氏が入手した砂川事件・伊達判決(一九五九年)に関する米政府解禁文書の主要部分を紹介します。電報は一通をのぞきマッカーサー米駐日大使から米国務省あてです。

 ■「部外秘」
 1959年3月30日午前6時52分受信
 夜間作業必要緊急電

 伊達秋雄を主任裁判官とする東京地方裁判所法廷は本日、…「…米軍の駐留は……憲法に違反している」と宣言した
 (中略)

 当地の夕刊各紙はこれを大きく取り上げており、当大使館はマスメディアからさまざまの性格の異なる報道に関した数多くの問い合わせを受けている。外務省当局者と協議の後、これら問い合わせには、「日本の法廷の判決や決定に関して当大使館がコメントするのはきわめて不適切であろう…」むね答えている。在日米軍司令部もマスメディアの問い合わせに同様の回答をしている。
 (後略)
 ■「極秘」
 1959年3月31日午前1時17分受信
 至急電
 今朝八時に藤山(外相)と会い、米軍の駐留と基地を日本国憲法違反とした東京地裁判決について話し合った。私は、日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調した。私はこの判決が、藤山が重視している安保条約についての協議に複雑さを生みだすだけでなく、四月二十三日の東京、大阪、北海道その他でのきわめて重要な知事選挙を前にしたこの重大な時期に大衆の気持ちに混乱を引きおこしかねないとの見解を表明した
 (中略)
 私は、もし自分の理解が正しいなら、日本政府が直接、最高裁に上告することが非常に重要だと個人的には感じている、…上告法廷への訴えは最高裁が最終判断を示すまで論議の時間を長引かせるだけだからであると述べた。これは、左翼勢力や中立主義者らを益するだけであろう。
 藤山は全面的に同意すると述べた。…藤山は、今朝九時に開催される閣議でこの行為を承認するように勧めたいと語った。

 ■「部外秘」
 1959年4月1日午前7時06分受信
 至急電
 日本における米軍の駐留は憲法違反と断定した東京地裁の伊達判決は、政府内部でもまったく予想されておらず、日本国内に当初どきっとさせるような衝撃をひろげた。
 (中略)
 岸(首相)は、政府として自衛隊、安保条約、行政協定、刑事特別法は憲法違反ではないことに確信を持って米国との安保条約改定交渉を続けると声明した

 ■「秘」
 1959年4月1日午前7時26分受信
 至急電
 藤山(外相)が本日、内密に会いたいと言ってきた。藤山は、日本政府が憲法解釈に完全な確信をもっていること、それはこれまでの数多くの判決によって支持されていること、また砂川事件が上訴されるさいも維持されるであろうことを、アメリカ政府に知ってもらいたいと述べた。法務省は目下、高裁を飛び越して最高裁に跳躍上告する方法と措置について検討中である。最高裁には三千件を超える係争中の案件がかかっているが、最高裁は本事件に優先権を与えるであろうことを政府は信じている。とはいえ、藤山が述べたところによると、現在の推測では、最高裁が優先的考慮を払ったとしても、最終判決をくだすまでにはまだ三カ月ないし四カ月を要するであろうという。
 (中略)
 一方、藤山は、もし日本における米軍の法的地位をめぐって、米国または日本のいずれかの側からの疑問により(日米安保)条約(改定)交渉が立ち往生させられているような印象がつくられたら、きわめてまずいと語った。
 そこで藤山は、私が明日、藤山との条約交渉関連の会談を、事前に公表のうえ開催することを提案した。(後略)
 ■「秘」
 1959年4月24日午前2時35分受信
 最高裁は四月二十二日、最高検察庁による砂川事件東京地裁判決上告趣意書の提出期限を六月十五日に設定した。これにたいし、弁護側はその立場を示す答弁書を提出することになる。
 外務省当局者がわれわれに知らせてきたところによると、上訴についての全法廷での審議は、恐らく七月半ばに開始されるだろう。とはいえ、現段階では決定のタイミングを推測するのは無理である。内密の話し合いで担当裁判長の田中(耕太郎。当時の最高裁長官)は大使に、本件には優先権が与えられているが、日本の手続きでは審議が始まったあと、決定に到達するまでに少なくとも数カ月かかると語った。
 ■「秘」
 1959年5月22日受領
 砂川事件は引き続きかなりの大衆的関心を惹きつけており、新聞は関連するすべてのニュースを目立つ形でとりあげている。(中略)
 …弁護側は事件の七人の被告を弁護するために一千人の弁護士を集めると豪語している〔日本の裁判では、理論的には、どちらの側の弁護士にも人数の制約はない〕。全体法廷での審議の予備的打ち合わせをする(本件の)第一小法廷齋藤悠輔主任裁判官は、これを阻止する決定をくだし、弁護士を一人の被告につき三人以下とした。この弁護士制限決定は、多くの評論家や朝日新聞を含む新聞から非難されている。
 弁護士の人数を制限するこの決定を擁護して、斎藤(判事)はこの決定により最高裁の上告審議が促進されると発表、きわめて重要な意味を持っているので最高度の優先度を与えたためにそうしたと説明した。新聞報道によれば、斎藤はこのほか、最高裁は米最高裁がジラード事件について迅速に決定したことを、砂川事件上告の処理を取り急ぎおこなう先例として重視していると述べるとともに、最高裁はこの事件の判決を八月におこなうだろうと予測したとのことである。
 ■「部外秘」
 1959年9月13日午前1時10分受信
 至急電
 外務省当局者がわれわれに知らせてきたところによると、(最高裁での)砂川裁判の弁護側は、予想通り日本を基地とする米艦隊が一九五四年五月にインドシナ半島沖海域で、また一九五八年の台湾海峡危機のさい金門・馬祖両島周辺で作戦行動をおこなったと申し立てた。
 われわれは九月七日、わが方のコメント(関連電報)を外務省当局者に伝え、かつそれを注意深く吟味した。外務省当局者は、それらのコメントをまだ検察事務所には届けておらず、届けるのを躊躇していると知らせてきた。その理由は、(関連電報の)1/2項は日米安保条約下で日本に出入りしている艦隊部隊が一九五四年五月に南シナ海に行ったことを明確に否定しているものの、第II部の台湾海峡関連ではそうした否定がなされていないからである。外務省当局者は、南シナ海部分だけの否定では、台湾海峡に関する別の定式化に注意を惹きつけることにならざるを得ず、弁護側から日米安保条約関係への新たな攻撃を受けることになるだろうと見ている。
 (中略)
 恐らく国務省は、このテーマ(11/3A)の質問が「兵力」と言っていてインドシナ半島問題にあるような「艦隊」FLEET に言及していないため、それを承認しなかったのだろう。…もし11/3項について1/2項と本質的に同様の否定を伝えることができれば、この点の回答は九月十五日までに必要である。どうか可能な限り迅速な返事を願いたい。
 ■(国務長官から米大使館へ)「秘」
 1959年9月14日午後9時28分発信
 至急電
 関連電報の最後のパラグラフ、第一センテンスは、部分的には正しい。台湾海峡危機のさいの米「軍」に、日本に出入りしている部隊が含まれていなかったという言い方は、日本から沖縄や台湾に移った海兵航空団や第五空軍部隊の移動から見て不正確なものとなろう。海兵航空団も第五空軍部隊も第七艦隊所属部隊とはみなされないから、この声明は第七艦隊についてはなしえても、これに続く日本の基地の使用の否定は、事実に照らして台湾海峡作戦の場合には正しくないだろう。というのは、基地は実際に使われたからだ。
 (後略)
 ハーター(国務長官
 ■「部外秘」
 1959年9月19日発信/9月21日受領
 左翼弁護士たちは、最高裁における砂川事件の弁論の最後の四期日を、安保条約と日本の西側陣営との同盟への手当たり次第の攻撃に費やした。弁論開始日に検察側と弁護側がともに発言をおこなったのとは対照的に、弁護側だけが連続四期日ぶっとおしで発言した〔九月九日、十一日、十四日、十六日〕。
 弁護団の攻撃のほこ先は最初、安保条約が国連憲章日本国憲法に違反することの論証の試みに集中した。弁護側はこれをするにあたって、安保条約を法的観点から正しくないと追及するだけでなく、アメリカと日本の意図を非難して同条約は日本の滅亡への道であると示そうとした。
 (中略)
 総評弁護団の弁護士(=内藤功弁護士)は、検察側がおこなったように、米軍は日本政府の管理下にないから米軍の駐留は合憲だと主張するのは筋違いだと述べた。同弁護士は海上自衛隊艦船はソ連の潜水艦を追跡する目的のため第七艦隊の作戦行動に参加してきていると主張し、在日米軍は日本の軍事力を「まさしく代表しており」、この状況は日本民族の滅亡への道であると論評した
 (後略)
 以上です。
 下に、元自衛隊員が「戦争法案」に怒る−を紹介します。今週の「赤旗」日曜版から。