サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

憲法の条件 木村草太・大澤真幸著


 憲法の条件 大澤真幸・木村草太著(NHK新書)を読んでいる。私にはチト難しかった。
 でもま「法の支配」、「立憲主義」、「法解釈の支配」、「当てはめ」などが少しは理解できた。

憲法の条件 戦後70年から考える (NHK出版新書)

憲法の条件 戦後70年から考える (NHK出版新書)

 しかし、あまり納得いかない点があったので書いてみたい。
 木村氏が、「アメリカとの関係は死活的に重要なので、そのための集団的自衛権を認めるという議論は、説得力をもつんだけれど、国際公共価値から集団的自衛権を考えようということ、つまり世界の警察官の一端を担おうということに対しては、自民党内に賛同する声は少ない」(P166)と書いている。(集団的自衛権の行使は憲法違反と言う立場からの文脈ではあるが)
 その議論から大澤氏は、「交番にアメリカの警察官に常駐してもらっている〜 日本が警察官を出さないで、米国に最も肝心な警察官を提供してもらっている限り〜、日本はたいへんな負い目」(P169)とし、「アメリカが軍事的な行動に出るか出ないかの基準は、自国が危ないかどうかではない。自分たちが行動しないと国際公共価値が激しく損なわれるかどうかにある」(P170)と書いてある。
 どうやら大澤氏は、米国の外交・軍事政策は、国際公共価値として世界から認められていると思っているようだ。若しくは、誤解を招く例で表現不足が重なった?とも思える。
 「世界の秩序」維持のための「警察官」としての振る舞いのアメリカを言っていると思うが…。

 ならば大戦後、米国が行った「ベトナム戦争」「イラク戦争」「アフガン戦争」「パナマ侵攻」「グレナダ侵攻」、他にもたくさんあるが、武力介入・侵略戦争の「国際公共価値」について証明してほしい。
 犠牲は、それらの国の軍人や武装勢力だけではない。圧倒的多数の民間人、女性や子どもたちが含まれている。ベトナムイラクでは、ダイオキシン劣化ウランを振りまき、今なお催奇性の子どもたちが生まれている。
 しかも犠牲は、相手国だけではない。戦場での死傷だけでなく、帰還兵の多くがPTSDに悩み自殺し、ダイオキシンやウラン弾の放射線障害に苦しみつづけている。

 これらの軍事介入は。米国民の利害とは一致せず、産軍複合体の利益追求の結果だ。したがって米国の国家・指導者と、一般国民の利害を分けて考え、多くは対立していると認識すべきである。弱者である自国民も他国民も犠牲にする、最大最強の強者のどこに、国際的にも国内的にも公共性があるというのか?
 それらの罪のない人たちを殺害した武力攻撃・戦争の出撃基地、帰還〜出撃の基地の中心は、日本の米軍基地だった。日本の米軍基地がなければ、これら米国の戦争は不可能だった。 逆に言えば、米国の侵略戦争に日本の米軍基地は必要不可欠だったし、相手国の人たちから見れば日本は侵略国・加害側にある。
 米国が行った侵略戦争への加担は、直接の武力行使でなくても集団的自衛権行使に入ると思うが、憲法解釈上とうなのか?知りたい。侵略を受けた被害国の立場から見た国際公共価値、戦争禁止の国連憲章からみてどうなのか?あまりにも強者の論理がまかり通っていないのか。
 これらの米戦略は、現在も継続中だ。ただ自国の相対的な力の低下を補うために、日本への負担を押し付けている。日本の外交、軍事、経済ほかは、ほとんど米国の政策の押し付けの結果だ。ニュースで流れている東京・横田基地への特殊作戦用のCV22オスプレイ配備の意味を現実を直視してほしい。
 しかしまた、日本の安倍首相は、単なる従属ではなく、対米下で能動的に、列強、武器輸出含む軍事大国化をめざして戦前回帰を果たそうとしている。
 大澤氏は、「日本に軍事攻撃があったときは、アメリカの存在が脅かされていようがいまいが、集団的自衛権を行使することになっている」(P168)とするが、本当にそうか?
 また「アメリカは自分の国が脅かされていないのに、日本が攻撃されたときはわざわざ助けてくれるお約束をしているわけです。そして、そのお約束を果たしやすいようにということで、日本の領土の中にアメリカの軍隊を置いている」としている。

 それは日本政府の宣伝であって事実は違う。在日米軍は日本防衛の任務も装備も持っていない。空母機動部隊、海兵隊、米軍への幻想も甚だしい。
 仮にロシアや中国と、核の打ち合いをしてでも日本を守るという事? 世界にそんなお人よしな国家はできたためしがない。
 同盟国が攻撃された場合、日米安保5条の対応と、NATO5条の違いについて、理由を説明してほしい。
 他国のために、米国民が自国本土に直接害が及ぶ戦争に有権者が賛成票を投じると思うのか?
 戦前、戦争中に、日本の指導者が沖縄を捨石にし、戦後も米軍基地を押し付けているように、利用して必要な場合はポイだ。

 支配国が流し、従属国の政権が自国民に受け流すプロパガンダの典型ではないか。
 中国は、その米国のあとを追って、大国化を急いでいる国家だ。
 だが、国民と国家指導者の利害は一致しない。日本国民と米国民と中国国民の利害こそが戦争をせず、社会保障の向上に予算を使うことにこそ互いの国民の一致点がある。
 さらに、グローバル経済社会において、かつての冷戦思考型の宣伝は、産軍複合体の利益のための宣伝文句だ。
これらの歴史的事実や、沖縄の新基地建設や、米軍従属下の自衛隊の一体化、訓練と装備など、現実の考察がないのも残念と言うほかない。