~科学からの警告と司法の責任~ 司法は気候へ変動の被害から救えるか--日弁連シンポ--にとても学ばされた。
紹介したい。まずは千葉恒久弁護士の報告~
ドイツの電力企業はペルーの温暖化被害に責任を負うか?
これ、あなたは、どう思いますか? 裁判官らはどんな判決を出したと思いますか? その論理は?
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原告はペルーの農民で、ドイツ裁判所にヨーロッパ最大の電力会社・ドイツのRWE社に対し、温暖化で進む氷河融解により氷河湖決壊被害の対策として、堰をつくる費用の一部の負担を求めたもの。
原告が求めた洪水対策費用がポイント。全部でなく、0.47%。
被告のRWE社は、たくさんの石炭火力発電所などを持ち、世界の総排出量の0.47%(オランダ一国で0.5%)であるからだ。
一審のエッセン地方裁判所は、「相当の因果関係が認められない」「因果関係は複雑で、特定の排出源から特定の被害に至る直線的な因果関係の連鎖とは似ても似つかない」として、請求棄却の判決を出した。
判決後に様々議論が行われ、フランクという弁護士が全面的に反論。
判決は請求を取り違えている。原告は、「被告の排出がなければ洪水の危険が存在しないと主張しているのではない」「被告がCO₂を排出したことで氷河湖が決壊する危険が、それに見合う分だけ増えた」と主張しているに過ぎないとし、もし被告の排出がなければその分だけ氷河湖の容積が少なく、氷河湖の水位の上昇幅も少なかったはずだとする。なるほど合理的で説得力ある主張だ。
それらの説明をIPCC5次報告を根拠にし、「温室効果ガスの排出の場合、どこで排出するか、いつ排出したか等は関係ない。排出の分だけ温室効果ガスの濃度を増し、その分だけ温室効果を高めている」「気候変動のプロセスは確かに複雑かもしれないが、その解明はテーマではない。訴訟では、CO₂の排出と氷河湖の水位の上昇との間の因果関係だけが問題になっている」と主張。
相当性について、「0.47%という割合は氷河湖の水量にすると30、000立方メートルに当たる。これは決して無意味と言えるほど小さいものではない。小さな無数の排出源のと被告のような大量の排出源とを平等に扱う事はフェアではない」とした。(図:同文書より)