サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「資本主義の次に来る世界」⑪良い人生に必要なものとは?

「資本主義の次に来る世界」のつづきです。
 第4章は、良い人生に必要なものとは何か? となっている。
 たしかに物質文明が便利な社会を生み出したには違いないが、果たして人々はそれほど幸福なのか?
 「成長主義がわたしたちの政治的想像力を支配している」→その成り立ちを知る事が大事だ。
 経済学者や政策立案者は、自然破壊、生態系崩壊を知りながら、「過去数世紀にわたって見られた福祉と寿命の驚異的な向上は成長のおかげだ。人々の生活を向上させ続けるには、成長し続ける必要がある。成長を放棄すると、人類の進歩そのものを放棄することになる」と答える。説得力がある。
 著者のヒッケル氏は、これに反論する。成長は進歩をもたらすか? と。
 トマス・マキューンというが学者が、1870年代以降、平均寿命が著しく伸びたことに気づき、経済成長によって平均所得が伸び健康増進に繋がったと主張した。
 なるほどその通りだろう。
 しかし植民地時代の虐殺や搾取、飢餓など、植民地国も含めるとそう単純ではない。植民地国の寿命が延びたのは1900年代初頭になってからのようだ。
 健康増進に寄与したのは成長ではなく、公衆衛生であり、飲料水と下水を分離したこと。
 米国の実証データによれば、1900年から1936年までに大都市における乳児死亡率の減少の3/4、死亡率全体の減少の半分を、衛生対策で説明できるそうだ。
 また、女性の地位向上や教育も重要だった。
 つまり、
「人間の福利の進歩は、経済成長とは異なる」と結論づけられる。これらも労働者や市民らのの運動が実現したことだ。