サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「ドーナツ経済」③組み込み型経済

 
.
.
 ケイト・ラワース「ドーナツ経済」のつづきです。
.
.
 経済を単に、企業と家計、労働者と資本、財、サービス、消費などの流れでなく、家計を重視している組み込み型経済として、こんな図を書いている。
 経済の中心の一つに家計をおき、商品としては反映されない富のながれを描き、地球の枠内での生物と資源、太陽エネルギーの流れを描いている。
.
 ケイトさん、表現力がとてもうまい。
 国富論で有名な経済学者アダム・スミスを批判。
 スミスは、「わたしたちが食事ありつけるのは、肉屋や酒屋や、麺麭屋の優しさのおかげではなく、彼らの儲けたいという欲のおかげである」と書いている。
 これに対し、ケイトさん。
 スミスが「市場の力を称賛したとき、女で一つで自分を赤ん坊のときから育ててくれた母マーガレット・ダグラスの優しさに触れることはなかった。43歳で主著「国富論」を書き始めたときには、年老いた母のいる実家の戻って、毎日、食事を作ってもらった。しかしスミスは、経済理論のなかには母親の役割は一日も出ていない。2世紀以上にわたって、母親の役割は無視されていることになった」と、皮肉は痛烈だ。
 女性ならではの恨みのこもった実感だろう。
 現在も「常識」となっているGDP、商品市場が全てという幻想に対し、家計による富の生産の事実を突きつける。
 労働は、毎日の家族によって支えられている。
.
「朝食を用意し、皿を洗い、家を掃除し、スーパーに買い物に行き、子どもに歩きかたと分かち合いの精神を教え、服を洗濯し、年老いた親を世話し、ごみ箱を空にし、学校に子どもを迎えに行き、近所の手伝いをし、夕食を作り、床を掃き、家族の話に耳を傾ける。主婦としての自分は、こういうことを一手に引き受け---心から喜んでそうする人もいれば、歯を食いしばってそうする人もいるだろう-----自分や家族の幸せを支え、社会生活を維持している」と、ケイトさん。
 私もカミさんのことを想像するに、少し胸が痛む思いがする。
 GDP経済指標がごまかしであり、実態はもっと広いという事だ。うちの場合は家庭菜園も含め、商品でない経済もかなり豊ということです。