アナザー・マルクスのつづきです。馴染みのなかった堀内出版ものを買うのは、もう1万数千円になるけど、もう少し安くならないかなー。
さて、ここでマルクスとエンゲルスの研究・著述の出版作業を、この本の「はじめに」から概括して紹介する。
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1883年マルクス死去
エンゲルスがマルクスの遺された文書の編集という、極めて困難な仕事にとりかかった。
困難というのは、下手な字、文章も不明瞭、文書はバラバラ。エンゲルスが優先したのは、資本論の2巻3巻完成だった。彼は未整理の草稿をかき集めて苦労の末、資本論を完成させた。そしてマルクスが亡くなった12年後の1895年に亡くなる。
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エンゲルスの死後、その作業は、ドイツ社会民主党に委ねられる。
しかし、未出版の原稿類は長くたなざらしにされたままだった。
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最初のMEGA版(完全版)の出版は、1920年代のソ連ではじめられた。しかしスターリンの粛清が研究者たちを襲い、作業が断ち切られた。
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次は1975年、東ドイツで始められたが、ベルリンの壁崩壊にともなって、またもや出版は中断された。
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その後1998年に出版が再開された。それまでに出版されたのは26巻。残りの準備段階にあったのは、資本論の準備段階のすべての草稿、数々の書簡、読んできた本の抜き書きやアイディアを書き込んだ約200冊のノートなどだ。
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これらはマルクスの批判的思考と理論的考察の複雑な工程であり、しかも未完成ながらどこまでも求め続ける思考過程だった。
著者のマルチェロ・ムストは「マルクス主義は、しばしばマルクスの思想を歪める罪を犯してきた」とし、ソ連の崩壊で国家主義の権威としてのマルクスから解放され、政治的に自由になった、と書いている。
ナルホド。たしかに…。
歴史的にも、これほどマルクスが語られた割に、全文書が出版されずにきた背景に、国家主義の政治的な思惑があると想像つく。
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