サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

ショック・ドクトリン 戦争の民営化⑨

 やがて20年近く前になる。私たちが侵略だと、米国のイラクへの戦争に反対していた頃、民間軍事会社が大きな問題になっていたのは知っていた。
 しかし、M・フリードマン学派の市場原理主義、民営化が、戦争の広範な分野にまで及んでいる背景は知らなかった。
 彼らが握った米政府のイラク戦争の目的は、①イラクに自由に米軍基地を展開すること ②米多国籍企業のため全面的に開放することだった。
 新自由主義者らがやりたいことは、公的部門の民営化だ。それは戦争開始前から計画的に進められた。
f:id:adayasu:20210811214423j:plain:left ラムズフェルドは、国防長官になるやいなや国防省と米軍の削減を強行した。
ウィキペディアより一部引用(1977年に製薬会社G.D.サール社に迎えられたラムズフェルドは1985年まで経営トップの座にあり、大胆なリストラを実行して業績を上げた。1981年に認可された人工甘味料アスパルテームの製造元であり、ロビー活動の見返りに1200万ドルを受け取った。1990年から1993年にかけて通信企業ジェネラル・インスツルメンツのCEO及び会長の職であった。1997年から2001年の間はインフルエンザ特効薬のタミフルを開発し、その特許を所有しているバイオテック企業であるギリアド・サイエンシズの会長を務めた。ギリアド社の株式を多数保有しており、鳥インフルエンザの懸念が高まった際には、同社の株式高騰によって巨額の富を築いたとCNNは報じた)
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 その穴埋めに、自分が関係する民間企業を戦争と復興に導入するというものだ。
 民間軍事会社(セキュリティ会社)のブラックウォーター社は、基地や施設などの警備から護衛、直接戦闘まで民間人に行わせた。
 ブラックウォーター社は、多数の民間人を捕まえて拷問・尋問をアブグレイブ刑務所などで行ったが、それらは世界中から雇った傭兵たちだ。
 開戦時は1万人ほどだった民間人兵士は、3年後、48000人となり、米軍に次ぐ規模となった。
 あまりにもひどい拷問に、良心が耐え切れず写真をリークした内部関係者もいた。
 黒い服に、すっぽり頭巾をかぶせられ、箱の上に立たされ、両手に電気ショックの電気コードを絡みつけられた、ショッキングな写真を覚えている人もいるだろう。
 イラク戦争の最大の利益獲得会社はハリバードン社で、チェイニー副大統領がCEOを務めていたし、最大の個人株主だった。利害関係はあまりにも明らかだ。
 様々な物資の調達、兵站にかかわる業務、復興関連の業務で莫大な利益を得た。ハリバートンが受注した契約は、総額で200億ドルというから2兆円以上になる。
 米国のイラク侵略で多数のイラク人が亡くなり傷を負った。十分な治療を受けられた人は少ないだろう。
 米軍兵士の側も、亡くなったり、外傷やPTSDに今なお苦しむ帰還兵も多く、自殺者も少なくない。
 帰還兵の治療は、縮小された国家の軍病院だけでは足りず、アウトソーシングされた民間病院が受注し利益を上げた。
 他国に兵士を送り、殺し殺させ、傷つけ傷つけさせ、そして治療する。愚かな行為だ。
 イラクへの、戦争と再建、いずれも計画的な民営化で大企業が大儲けするシステムだった。ハリバートンには、破壊事業と復興事業の両部門が併設されていた。
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 「ショック・ドクトリン」、2011年発行なので10年前のこと。もっと早く読んでおくべきだった。
 私たちも、イラク戦争自衛隊イラク派兵に反対したが、こんなことまでは知らなかった。
 あらゆるものが商品となる社会が資本主義。戦争も破壊後の再建も様々な商品として売り買いされた。
 それはGDPに換算され、経済成長とみなされる。ここに資本主義の本質が示されている。