サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「ドーナツ経済」⑤市場とマッチ---取扱いに注意せよ」

   ドーナツ経済のつづきです。
 忙しかったせいもあり、前回からかなり間が空きました。
 それまで良い題材があって、折り目も付けていたけど忘れてしまった。
 久しぶりに読み始めたところ、「市場とマッチ---取扱いに注意せよ」を紹介したい。
 人々の行動の行動を変えさせるためには、価格をつける事、市場に委ねるほうが良いとされる経済学は本当か?というものだ。
 ケイト・ラワースは、いくつもの社会実験を紹介している。
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 献血制度に関するもので(R・ティトマス)、アメリカの場合は献血するとお金が支払われ、イギリスの場合は無償で血液を提供しているが、どちらが制度的に成功しているか?の調査。
 どうやら無償提供のイギリスの方が成功しているそうだ。
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 テキサス州ダラスの学習到達度の低い学校に導入された「学んで稼ぐ」と呼ばれる制度。6才の児童に、本を1冊読むごとに2ドル与える制度だ。はたして?
 制度開始から1年のあいだに、子どもたちの国語力には向上がみられた。しかし長期的に見たとき、お金は子どもたちの学ぼうとする意欲にどんな影響を及ぼすか?
 「どうしても懸念されるのは、子どもたちがお金をもらうことで、読書をお金を得る手段と考えるようになってしまい、その結果、読書そのものを好む気持ちが弱まったり、忘れられたり、失われたりすることだ」(M・サンデル)という事らしい。
 こんな実験もある。
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 イスラエルの託児所で、子どもの引き取り時間に10分以上遅れた親に対し、少額の罰金を科す制度を導入した。親の反応は?
 遅刻は、減るどころか、逆に、倍に増えた。罰金の導入で、遅刻に対する親たちの罪の意識が消えたせいだそうだ。
 親たちは罰金を延長に対する市場価格と受け止めた。しかも実験が終わり、延長料金がなくなっても、遅刻は多いままで、親たちの罪の意識は戻ってこなかったん、だとさ。
 こんな面白い例も紹介されている。
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 オンライン調査で、もし日照りで共同井戸の水が少なくなり、水不足に見舞われた4家族があって、そのうちの1家族が自分だったらどうするか?想像させた。
 水不足のシナリオを描くとき、半分の回答者に対しては、もっぱら「消費者」という言葉を使い、半分の回答者に対して、もっぱら「個人」という言葉を使った。さて、どんな結果だったか?
 「消費者」と呼ばれた回答者は「個人」と呼ばれた回答者に比べ、行動を起こそうとする責任感も、他者を信頼する気持ちも弱かったそうだ。
 共有資源の枯渇という問題に直面しながら団結できず、自己中心的な考えに固執してしまう。
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 ケイト氏は、「地球の『供給源』と『吸収源』---水や魚から海や大気まで----過剰な負荷をかけている21世紀の世界において、わたしたちが人類全体の課題にみんなで取り組もうとするとき、自分たちをどのように言い表すか」重要な示唆だと指摘する。
 言葉は重要だとケイト氏。「個人」「隣人」「地域社会の一員」、、、
 私たちは、朝起きてから、夜寝るまで、毎日毎日、広告を見、聞きながら生活している。「これが新しい」「あれがいい」と、商品がひっきりなしだ。商品を買い消費する者→消費者。