昨日のつづき「経済」8月号から。「一帯一路構想とアフリカ」―佐々木優明治大学教授の論文から紹介します。
中国は、「一帯一路」構想の前から、アフリカへの経済進出を行ってきた。歓迎もあれば、軋轢も生んでいるようだ。
今後、「一帯一路」構想に力を集中せざるをえないため、アフリカへの動きは弱まるかもしれないが、アフリカの人口増を考えるとやがて進出を強めるとも思われる。
佐々木教授の指摘として、
アフリカを取り込む中国の思惑として、
①中国は過剰生産に陥っており、新たな輸出先の開拓
②中国の資源に対する外部依存の高まりのため
③経済の中心が沿岸部に集中しているため内陸部の経済発展、工業化の促進
④関係国間で人民元の兌換、決済を促進し、人民元の国際化を加速させる。など。
アフリカ側のメリットとして、
①東アフリカ地域の港湾整備
ケニアの港湾都市のモンバサを玄関口とし、ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピアへの輸出・輸入のルートめざす。
②鉄道インフラの建設・整備
エチオピア〜ジブチ、ケニア〜内陸国間、ケニア〜タンザニア〜アンゴラ間の鉄道と高速道路網の整備
③海上輸送上の安全保障
モンバサ周辺はソマリア系の海賊行為が起こる地域で、海上輸送の安全保障を確保する
④エネルギー、鉱物資源の探査・開発
ビクトリア湖周辺の石油・開発など、投資する中国を通じて資源輸出ができる
⑤通信インフラの整備など
通信環境の整備、スマホなどの端末によるサービスの普及が期待される
アフリカ側の課題として、
①これまでの計画との整合性。
一帯一路の以前から進められてきた計画が遅れたりとん挫する可能性がある。
②資金面の課題。
これまでの投資が十分な効果を生み出しているか疑問がある。現在、中国のアフリカ投資は減少傾向にあり、十分な資金が供給されない可能性がある。
③インフラ事業の課題
現在すすめているインドネシアの高速鉄道は、計画より事業が大幅に遅れている。
④資源開発に伴う貿易拡大の弊害
資源開発・経済では、現地の雇用を十分生み出せず、逆に貿易赤字を恒常化させる可能性がある。(先進国の債務に苦しむ南北問題と同じ)
ということで、一帯一路がアフリカまでどのように及ぶか?、アフリカ自身にとって、よりよい判断や決断が必要な課題も多いようだ。
で、私の懸念は、このように生産と流通と廃棄が、際限なく大きくなっていいのだろうか?ということだ。
豊かな生活を追い求める権利は、人にはあるだろう。だが、それでも地球には限界がある。
限られた地球の環境や生態系を破壊しまくる権利はない。
人類が及ぼす影響は人類同士が話し合って解決するしかない。
過去、現在、未来… それぞれの地域…… 欲望の調整ほど、困難なものはない。
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直面するこの課題に、現在マルクス主義がほとんど貢献していない事を嘆かずにはおれない。