「裁かれるは我なり」−元裁判官熊本典道さんの話のつづきです。
熊本さん、司法試験で筆記試験は1回で合格。口述試験の1回目は失敗、2回目の時。
国選弁護問題で、質問者が「最後に、必要的弁護事件で、日本で一人も弁護人がいなくなったとき、裁判所はどうしたらいいんですか?」と聞いたらしい。
みなさんは、どう思います。「そんなことはありえない…」と思うでしょう。普通。
試験管は「結構です」と合格にしました。
熊本さんはなんと答えたでしょうか?
「無罪にするしかないと思います」だそうです。
それから、
熊本さん、東京地裁に勤務中、刑事14号部=拘留担当だった時がある。
検察官の家宅捜索令状や拘留の請求を認める判断を下す裁判官です。
ほとんど100%請求を認めるそうだが、熊本裁判官は、拘留請求を3割も却下したそうだ。驚異的数字。
それほど審理が厳しく誤捜査に歯止めをかけたようだ。それで熊本裁判官は、検察から相当の嫌がらせを受けてもいた。
拘留を却下した人物に赤尾敏と言う男がいたそいうだ。知る人ぞ知る右翼の老大物。
赤尾がレストランで食事をする時に、ウエイトレスが乱暴に置いたコップの水が飛び散り、上着にかかったそうだ。そのことを注意したことで怖がられて通報され、警察に引っ張られていった。
熊本裁判官は赤尾敏に「あなたが逃げたからってすぐにわかりますよね。あなたを閉じ込めたってしょうがない」「今日は帰っていいえすよ」だったらしい。
捕まったことは数知れずあったが、地裁まで来て拘留されずに、裁判官から帰っていいと言われたのは初めてのことだった、と、赤尾。