9/6「毎日」の「論点」―慶応大学の井出英策教授が述べている「分配革命」―中身を見ると昔ながらの自民党の増税宣伝と変わらないと思った。
井出氏は、「全ての国民が痛みを分かち合い、全ての国民の生活保障する」と言う。ちょっと待てよ? なぜ「痛み」=増税に、国民だけを入れて、なぜ大幅な利益をあげている企業を特別扱いして除くのか?
財務省が9月1日に発表した法人統計では「内部留保」が、前年から28兆円も増えて、406兆円2348億円に達した。5年連続で過去最高を更新中。
年金は減らされ、給料も上がらず、非正規で、貯金を取り崩しながら苦しい生活をしているのに、企業は、前年度比7.6%の伸びで貯金をしている。16年度の企業の経常利益も、前年度比9.9%の伸びで約75兆円、1960年以降で最高だ。
井出教授に、この辺りの「現実認識」を聞いてみたい。
次に、増税対象の「全ての国民」の中に、富裕層は入っているのか?
井出教授にの念頭にあるのは、消費税の増税だが、「世帯収入300万円未満の世帯が全体の33%、400万円未満がほぼ5割を占めている」状態で、所得のほとんどを生活するために使っている生活費にかける消費税を増税しようとする。
右のポケットから増税して、左のポケットにわずかに給付、少し賃上げをするようなもので、低い所得と苦しい生活は変わらない。大企業の内部留保、富裕層のポケットから増税して、賃上げや社会保障に回してこそ生活者の経済、ひいては日本の経済が回るというものだ。
これでは、生活苦、貧困の世帯が増大するばかりだ。
もともと「社会保障の財源のため」に消費税がつくられ、税率引き上げのたびに、国民をあきらめさせるために「高齢化社会のため」と、自民党が言ってきた。
一方で表のように、大企業には減税プレゼントだ。
自民党が国民の反発が強い消費税増税を民主党にやらせ、アベ政権は選挙を前にして2回も税率の引きあげを延期して議席を伸ばし、その間に秘密法や安保法など改憲への道を強行してきた。
そもそも、なぜ井出氏は、自民党のアベノミクスを正面から批判しないのだろうか?
年金基金などの公的資金を株に投入して株高をつくり出し、株主に巨額の利益をもたらしている。
そんな経過の中で、井出氏言う通りに民進党が消費税増税を主張とするとなると、自民党は大喜び、安心して増税を実行できる。
「安倍政権に対する新しい選択肢」どころか、同じ増税の競い合いとなる。