「マルクスと福祉国家論」(聴濤弘著:大月書店)のつづきです。
マルクス主義は福祉国家をどうとらえるかについて書いてある。
どうも、これまで私が科学的社会主義として学んできたことと少し違う気がする。
「福祉国家」論は、社会民主主義の修正主義的なものと思っていた。
「社会科学総合辞典(新日本出版)」では、次のようになっている。(聴濤引用)
「国家が社会保障や完全効用政策などをつうじて経済・政治過程に介入し、社会福祉の増大をはかることによって、資本主義の民主的改革、さらには社会主義的変革をすることなしに、資本主義の矛盾と階級対立をとりのぞいて、資本主義のもとで平等で豊かな社会が実現できるという幻想をあたえる議論。主として厚生経済学の理論にもとづいている」
けど、聴濤さんによれば、福祉国家の具体的内容を最初に提起したのは、マルクスやエンゲルスであると主張する。
ドイツ社会民主党の「エルフルト綱領(1891)」は、カウツキーらが書きエンゲルスが指導して仕上げた。当時は社会民主主義も共産主義も同じと受け止められていた。
「エルフルト綱領」は、第1部は理論部分で「資本主義的史的所有を社会的所有に転化すること」と生産手段の社会化を明記している。
で第2部の政治的要求として、ドイツ帝国議会を普通選挙にもとづく人民代表機関に変える事、言論・集会・結社の自由を要求することが中心になっているようだ。
福祉制度の部分では、
①公立小学校から高等教育機関にいたるまでの無料教育。無料の教材と無料の給食。
②助産および薬剤を含む無料の医療。無料の埋葬。
③累進税と財産税の導入。あらゆる間接税の廃止。
第3部は経済的諸要求で、
①最高八時間を超えない標準労働日の制定。
②14歳未満の児童労働の禁止
③夜間労働の禁止。(ただし、技術的、公共的理由から必要な産業部門は除く)
④すべての労働者にたいする毎週少なくとも36時間の連続休息期間。
⑤トラックシステムの禁止。
⑥帝国労働局、県労働局、ならびに労働委員会による全商工業経営の監督、および都市と農村とにおける労働諸関係の調査および規制。徹底的な産業上の労働衛生。
⑦農業労働者および奉公人の商工労働者と法的同等化。奉公人令の廃止。
⑧団結権の保障
⑨管理への労働者の決定力を持つ参加を備えた、全労働者保険による帝国引き受け。(労災、健康、老齢年金を国家に責任を持たせる)
などなど。 社会主義社会に至るまでにも、労働者の広範な諸要求を実現していこうとする。
現在に至ってなお、実現していない先進的なことまで、126年前に綱領として掲げていたなんてすごいと思う。
しかしそれほど、資本家の抵抗が大きく、労働者の運動も、道半ばということか。
しかも、非正規労働やギグワークなど、さらに悪くなり、労働者と国民の組織化が後退している面もある。
さらに進んで、バルファキスが主張するテクノ封建制の問題もある。
プラットフォーマー資本家とのたたかい。