デジタル・デモクラシーのつづきです。
スマートシティ計画は、人口300万のカナダ・トロントで2017年に進められた。
光る敷石で舗装され、瞬時にデザインが変わる街路や、時間帯によって自動車走行のための道路に切り替わる歩道、ごみは地下のダストシュートと通って捨てられるなど、技術が住民の快適な生活を約束するとされた。
会社はサイドウォーク・ラボ社(グーグル傘下)。無数のカメラやセンサーと「地域に設置し、人流や気象などのデータをリアルタイムで収集・活用する。
しかし住民説明会では多くの疑問が出された。
「現代のスマートシティはユートピアではなく、社会、民主主義、主権に対して現実的な挑戦をもたらします。ほとんどの政府・自治体にはスマートシティ開発を規制する政策がなく、トロント市もそうでした。との都市でも、データ技術は、住民の追跡や監視、プロファイリング、または利益を得る目的ではなく、地域のニーズに基づいた政策と社会正義に資するべきです」--民主主義と技術の課題に取り組む「テック・リセット・カナダ」のビアンカ・ワイリー氏が強く懸念を訴える。
かくして住民の反対運動が広がり、2020年、サイドウォーク・ラボ社は計画から撤退した。
一方でスペインのバルセロナは、「スマートシティのインフラを民主化」へと進む。
技術を中心に考えるのではなく、市民を中心に据え、その周りに技術があることを理想とする。
「都市OS」ーデータ・コモンズ。
つまり情報は、社会の共有財産だということだ。
生産手段でもあり、私的所有から少しづつ社会的所有に移すべき。
市民が市政に参加するデジタル参加型プラットフォーム。市民が様々なことで提案・参加できる。
例えばある市民が「市内のビルの屋上に農園をつくれば、市内の緑化にもつながるし、食べ物を自分たちでつくることができる」と提案した。
賛否を含め多くの反応が市民からあり、議論の末に正式な提案として議会に諮られた。その結果、複数のビルの屋上に農園が作られることになったそうだ。
記事と関係ありません。芽吹く柿の木。