サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

デジタル・デモクラシー⑧ 小農民とデジタル

 デジタル・デモクラシーのつづきです。
 著者の内田さんは、ビッグテック「企業がデジタル農業分野へと進出し、生産と流通、販売、機材購入から金融ローンまでを含むフード・システム全体を統合する」動きを明らかにする。
 インドでは農民保護のため、政府が最低支持価格を設定する、「マンディ」と呼ばれる地域ごとの公設市場で、ほぼすべての農産物を販売してきた。
 2020年インドでは、モディ政権の下で「新農業法」が成立。規制緩和の一環として農民が自州以外の市場やスーパー、食品会社などの民間企業にも自由に農産物を販売できるようになった。
 インドには、リアランス・ジオ・プラットフォームズ社というインド最大の通信事業者があり、ここにフェイスブックは57億ドルを出資し、約10%の持ち分を取得した。
 この巨大企業の傘下に、インド最大の小売りチェーン、食料品分野で40%のシェアを持つのリアランス・リティル社がある。新農業法の下で同社は農民から直接農産物を買い取る最大手となる。
 フェイスブックは、メッセージやビデオ通話の無料アプリの「ワッツアップ」提供、インドで5億人がユーザーとなっていて、新農業法によってリアランス・リテイル社農産物を販売する場合、「ワッツアップ」を使うように指定される可能性がある。
 そうなるとアプリを通じて、どの農家が何をいくらで販売したか、消費者は何をいくらで買ったかなどのデータを取得できる。

「アジアでは4億2000万人の小規模農家がこの地域の食料の約80%を生産している。
 小規模な農家、漁民、畜産農家、食料販売業者がアジアの主要なっ食糧生産を担っている。
 ここにビッグテック企業が参入しようとし、利益と支配を得ようとしている。

 マイクロソフトは「アジュール・ファームビーツ」というデジタル農業プラットフォームを構築、土壌や水の状態、作物の生育状況、病害虫の状況、天候に関するデータや分析をリアルタイムで農家に提供する。
 バイエル社は「クライメート・フィールド・ビュー」というデジタル農業プラットフォームを立ち上げ、農家は自分の農場での作物の生育状態、害虫の発生状況などのデータをスマホバイエル社に提供、バイエル社は農家にアドバイスを与える。
 同時にアプリからはバイエル社の農薬や肥料などの製品広告、割引サービスの情報が送られてくる仕組み。
 新自由主義の下で、巨大で吉良津企業による支配と、中小零細農漁販売業者が依存する仕組みがつくられつつある。