ルポ「トランプ信者」潜入一年-横田増生著(小学館新書)のつづきです。
トランプの経歴を少し紹介する。
ベトナム戦争でアメリカの多く若者が徴兵され、戦地に行き亡くなったりり負傷した。しかしトランプは5回も徴兵猶予をうけているという。そのことから彼が戦争ギライなら良い事だ。ガザやウクライナを見ると、とてもそうとも思えないが。
父のフレッドは、子どもたちに、人生とは戦いであり、必ず勝者と敗者が存在する。勝てないということは負けることであり、負けるとは、とことんやられる。負けることは、自分の存在が無になることだ。弱さこそ最大の罪である。だから、必ず勝者になれと、教えた。
トランプは、地元の小学校に通ったが、手のつけられない、いじめっ子だった。年少の生徒を罵倒したり揶揄したり、暴力沙汰まで引き起こし、学校にいられなくなった。
そのため父フレッドは、トランプを全寮制の陸軍士官学校を模した厳しい男子校に送り込んだ。当然のように、体罰やしごきもあっただろう。
さらにトランプに「人生訓」をたたきこんだのがロイ・コーン弁護士だ。
米国にで吹き荒れた悪名高い〝赤狩り〟を進めたマッツカーシー上院議員の懐刀となったのがロイ・コーンだ。
悪事を働くと訴訟となる。2016年6月1日のUSAツディ紙は、トランプを3500件の訴訟を抱えながら大統領の候補者と、報道した。
どうやら右派は右派の系統がずっと続いていて、権力を取り、悪政をつづける。
不動産王となったトランプだが6回も倒産にあえいでいる。
復活したのは、『アプレンティス』というテレビのリアリティ番組に出演してからだ。番組初回は2000万人が視聴したという。
以後10年間に渡って番組に出演し、高視聴率のもと、事業の成功者というトランプイメージが作られた。
『アプレンティス』(見習い)番組では、16人の若者を2チームに分けて競わせ、敗北したチームからは、毎週1人が2人が、トランプから「お前はクビだ!」と告げられ去っていく、というような内容らしい。
現実の弱肉強食を、おもしろおかしく番組でやられると、弱者の視聴者も、強者の側にいるように思えるのかもしれない。
そんなこんなが、トランプを2度も大統領に選ぶ、米国民の心理的背景にあるように思える。
ただ、単なるテレビ番組の視聴者、SNSの利用者なら「お笑いの消費者」でいいかもしれない。
しかし現実の悲劇は、米国国民よりも先に、パレスチナやウクライナ、弱い立場の人たちから先に現れる。
様々な判断や行動の前提として、事実を知ることがいかに大切か、思い知らされる。