サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「ドーナツ経済」⑨

「ドーナツ経済」をやっと読み終えた。
 読んだ文庫本は昨年7月の出版なのだが、もともとは2017年に刊行され、すぐに訳本も出ている。
 もっと早くに読んでおくべきだった。時間おいて、もう一回読むことにしよう。
 7章は、成長にこだわらない-- という章
 ケイト氏、オックスファム(貧困と不正を根絶するための持続的な支援・活動を行っている団体)の在籍中の2012年に、上司から「今後、高所得国で『グリーン成長』という概念を推し進めるべきか、それとも『脱成長』の陣営に加わるか、について判断を下すため、判断の材料になるレポートを作成してもらえないか」と頼まれたという。
 2012年と言えば、10年も前の事。私が「脱成長」という言葉を知ったのは、2020年10月に斎藤幸平氏の「人新世の資本論」を読んでからだった。
 なので、おそらくEUなど欧米では、早くから「脱成長」の議論がまき起こっていたのだろう。
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 経済成長せずに、国民の窮乏に終止符を打った国はこれまで一国もない。
 経済成長によって、自然環境の悪化に終止符を打った国もこれまで一国もない。
  という矛盾、悩ましさがある。
 各国とも経済成長を求め、憑りつかれたように終わりのない成長率の競争をつづけている。
 しかし、その終わりは想像しない。していない。
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 10%の成長率は、7年で倍の大きさになり、3%だと23年で倍になる。
 自分の収入が年率3%増だとしても、20年ぐらいたてば倍になると、たいへんうれしいことに思える。
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 2015年世界の成長率は約3%で、世界総生産(GWP)は80兆ドル(約11,600兆円)だった。
 その成長率3%が続けば、2050年には、約3倍に、20100年には10倍以上、2300年には240倍になる。
  しかしそんな世界全体の、地球上での、物の動きとエネルギー消費、廃棄を想像するとなるとどうだろう?。
 今でこそ、地球への環境負荷は、地球の1.3倍以上でオーバーしているのに。
 私たちは無限の経済成長を信じて、あくなき生産と消費をつづけている。だが、その終息は想像しない。
 「指数関数を理解できないことは、人類の最大の欠点だ」--原子核物理学者-アル・バーレット。
 惑星・地球のシステムの限界内に人類活動を制限することは当然のことだ。気候変動などは、既にドーナツの外枠をはみ出している。
 そして、それほどの物質の生産を行っているのに、人類全体は不公平で格差があり、気候災害も貧しい人たちから犠牲を強いる。この経済社会システムを、急いで変える事が必要な時期にきている。