6月初旬に書いた、それでも、日本人は「戦争」を選んだの続きです。
途中、面倒くさくなって別本を読んでいたのですが、やっと最後まで読み終えました。
著者の加藤陽子さんは、かなり膨大な本や文献を読み込んで知識にし、ときどきのたくさんの人物が記録したものを紹介して、歴史を多角的に紐解いています。
高校生相手に5日間の講義で、高校生に質問させ、多くの回答を高校生に出させながら話を進めています。
私がこれまで読んできた歴史本の傾向とは違う感じがしていて、当時の様々な立場の多様な考えを知らなければ、歴史認識に間違いが生じると、少し反省しています。
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例えば、中国の胡適(こてき)という人物、日本が真珠湾攻撃を行った頃の駐米大使が紹介されています。
胡適は[日本切腹 中国介錯論]を唱えたそうです。侵略している日本は切腹、その首を切り落とす中国、という驚くべき主張です。でもま実際に、歴史はそんな感じになってしまったのです。
胡適の見方はこんな感じです。
「アメリカとソビエトをこの問題に巻き込むには、中国が日本との戦争をまずは正面から引き受けて、2、3年間、負け続けることだ」と、蒋介石の前で言ったそうです。よく言ったものですね。2、3年間も負け続ける、なんて。
具体的には、
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「中国は絶大な決心をしなければならない。この絶大な犠牲の限界を考えるにあたり、次の三つを覚悟しなければならない。第1に、中国沿岸の港湾や長江の下流域がすべて占領される。そのためには、敵国は海軍を大動員しなければならない。第2に、河北、山東、チャハル、綏遠、山西、河南といった諸州は陥落し、占領される。そのためには、敵国は陸軍を大動員しなければならない。第3に、長江が封鎖され、財政が崩壊し、天津、上海も占領される。そのためには、日本は欧米と直接に衝突しなければならない。我々はこのような困難な状況下におかれても、一切、顧みないで苦戦を堅持していれば、2、3年以降に移動しなければならなくなり、ソ連はつけ込む機会が来たと判断する。世界中の人が中国に同情する。英米および香港、フィリピンが切迫した脅威を感じ、極東の居留民を利益を守ろうと、英米は軍艦を派遣せざるをえなくなる。よって太平洋の海戦がそれによって迫ってくる」
「以上のような状況に至ってはじめて、太平洋での世界戦争の実現を促進できる。したがって我々は、3、4年の間は他国参戦なしの単独の苦戦を覚悟しなければならない。日本の武士は切腹を自殺の方法とするが、その実行には介錯人が必要である。今日、日本は全民族切腹の道を歩いている。上記の戦略は『日本切腹 中国介錯』というこの八文字にまためられよう」— ウィキペディア--「世界化する戦争と中国の「国際的解決」戦略」、石田憲編『膨張する帝国 拡散する帝国』東京大学出版会
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確かに中国は、日本の侵略戦争で、南京、武漢が陥落させられ、臨時政府の重慶まで無差別爆撃をうけ大変な目にあう。しかし胡適のいうように、米、英、豪が参戦することになった。そして日本は、国力に優る米国によって徹底的に打ちのめされた。つまり国家的な自殺に等しかった。侵略を受けた中国は、生き延びるために、それを仕掛け「介錯」に成功したというわけだ。
中国、アジア各国民の犠牲は大きかった。日本の兵士も民間人も犠牲は大きかった。米軍兵士だって犠牲は少なくなかった。戦争しなければよかったものを。
多大な犠牲、今日、この教訓は生きているだろうか。軍事力の増強は各国で進んでいる。