サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

惑星の物質代謝⑥--畜産

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「この牢屋のなかで動物たちは生まれ、殺される日までそのなかにいる。問題は次のようなことだ。このシステムが、飼育システムと結びついて、動物を単なる肉と脂肪の塊に変えるために、異常な形で成長させ、その骨を抑えつけるが、しかしそれ以前は、(1848年より以前)解放された空気のもとに可能な限り留まることによって(悪影響)は緩和されていたのであり、最終的には、生命力を大いに損ねる原因になるのではないか?」(MEGA iv/18:303)
「交配と選択によって、羊がより早く育ち、より多くの肉をつけることを可能にする。この「改良」にマルクスは「早熟、全般的に弱弱しく、骨の欠如、たくさんの脂肪と肉の発達など。これらすべては人工的な産物である。へどが出る」こんな記述もある。

 これは今から153年ほど前に、マルクスが研究のためにノートに書いたものだ。
 農学者のヴィルヘルム・ハムの著書-「イングランド農業用具と機械」―交配と飼育方法の改良による畜産業の生産性増大についてに、批判的なコメントとして。
 これは、今日のアニマルウェルフェア問題にも通じる話だろう。(写真は日本の田舎の牛さん。のんびりしていた)
 上記を「大洪水の前に」で紹介した斎藤幸平氏は、「マルクスは、イングランドの資本蓄積のため、アイルランドの労働者のみならず、地域の生態系や生活が資本にとっての有用性へと従属させられ、破壊される環境帝国主義を批判しようとしたとし、。
f:id:adayasu:20210519195913j:plain:w250:right マルクスにとって、人間と自然の物質代謝を持続可能な形で維持する可能性を掘り崩すような生産力の増大は「発展」ではなく、「掠奪」にほかならない。
 生産力至上主義者としてマルクスはしばしば批判されてきたが、「生産力」の概念は、人間と自然の物質代謝の意識的な管理を実現するための主体的能力も含むものと理解されなければならないと書いている。
 最近、聽濤弘氏が自身の研究に基づいて、「生産力」の概念を「生産性」としても、捉える必要があるとた本を出した。それはレーニンが「経済学批判 序言」に言及した本で、ロシア語では「生産性」と訳しているからだという。
 どうやらマルクスが晩年に到達し、描いた「未来の社会」は、誤解されている「生産力至上主義」ではなく、物質代謝のかく乱をしない、持続可能性を考慮したものだったようだ。