サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

「人新世の資本論」⑤資本主義-収奪と負荷の外部化・転嫁

f:id:adayasu:20201004184328j:plain:left 斉藤幸平氏は、「資本主義は自らの矛盾を別のところに転嫁し、不可視化する」とのマスクスの考えを紹介し、利潤追求のための三つの転嫁方法を指摘する。
①技術的転嫁、生態系の攪乱ー環境危機を技術的発展によって乗り越えようとする。
 商品としての農産物生産のため、地力の回復を待たず作物を植えるので科学肥料をやり、酸性化を防ぐために石灰をまき、病気や虫対策のため農薬をまいて消毒をする。除草剤も同様だ。しかし撒かれた化学物質は、環境ホルモンとして生物の生殖への影響が指摘されているし、ミツバチの大量死で受粉への影響が問題になっている。
②空間的転嫁-外部化と生態学帝国主義
 アポカドは欧米や日本人のためのヘルシー食材として輸出用に南米などでの生産が増えている。
 しかしアボカド栽培には大量の水が必要で、土地の滋養も食い尽くし、その後の他の果物などの生産は難しいようだ。
 チリのペトルカ地域では、灌漑や地下水をくみ上げて生産し、干ばつにおそわれ住民の飲料水が不足する事態となっている。
 1キロのアボカド栽培に必要な水は2000㍑と言われ、トマトの10倍だそうだ。アボカド1ヘクタール栽培には毎日10万リットルの水が必要で、1000人が1日に使う量と同じといわれている。(下の記事参照)
 先進国の豊かな消費、「ヘルシー」食材のため、周辺部地域の住民の生活が困難になるなる事態。
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③時間的転嫁 
 過去の環境破壊は、森林の過剰伐採や工場や鉱山などからの海や河川の汚染で即時的に被害が現れた。しかし現在おこっている気候変動は、何十年度に大きな影響が表れ、地球規模なので気づいた時には手のほどこしようもなくなる。これは未来からの収奪にあたる。
 プラスチック問題も、未来はどうなるのか? 子どもたちが様々なルートで摂取する事になる。 しかし私も毎日、プラに囲まれた生活、、暗澹たる気分になる。

 将来世代につけをまわしながら現在世代の繁栄があるが、未来の人たちに現在を左右する投票権はない。ここにも加害と被害の関係があり、気候正義が問われ、現在世代の責任が問われる。
 そして子たちは、その責任を問う権利がある。