サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

戦場の体験者

 お盆が終わり戦争の話題も少なくなりますが、もう少し続けさせて下さい。
 それは、今や戦前であり、再び戦争の道に踏み出すかもしれない危険性があるからです。
 先の戦争は、同じ日本人が行ったからです。「今はむかしとちがう」と言い切れるほど、戦争・戦場を知らない。加害と被害の階層性、その責任の階層性もしっかり認識、自覚する事が必要です。

 保坂正康氏の著書-「戦場の体験者」③のつづきです。
 保坂さんの本は何冊も読んでいますが、被害者の戦争体験は、見ていませんでした。
 家族を殺された老婆の発言−
「わたしひとりぼっち。私の夫、息子、娘がこいつのために殺された!それも天宝山のトーチカに押し込まれて……。そして、あの恐ろしいダイナマイトで何十人もの村人や抗日軍の兵士たちと一緒に爆破されてしまった!」
「その下手人が鵜野がここにいる! 一日としてこの恨みを忘れたことはない! 爆発したあと、鵜野の日本鬼子の部隊が逃げた後、たくさんの村人と泣きながら山上に来てみると大きな穴のまわりに手足、首、胴体がバラバラの死体の山……(老婆は嗚咽し、暫し床に倒れて泣き続け、やっと裁判長の指図で警戒兵から起こされた) 裁判長! いますぐこの鬼めを殺して恨みを晴らしたい! こいつめのために十余年もの長い間、どんなに苦労したことか! 日本軍に焼かれた家の廃墟に穴を掘り乞食の生活、その苦労は筆舌に尽くせない! 裁判長! わが家の苦しみのどん底に突き落とした鵜野を死刑にして下さい! 夫を息子を娘を殺したこいつがのうのうと生き続けているなんて…」
 「そう叫んで老婆は、鵜野のもとに近づいてくる。警戒兵が老婆を制止して元の位置に戻した。老婆は、泣き叫びながら必死に近づこうとする。裁判長は「証人は静まれ!」とどなる」
 これは敗戦後、中国の軍事法廷での裁判にかけられた鵜野自身が「菊と日本刀」で書いている。保坂氏がインタビューもして経過を紹介している。
 こんな悲惨な事があちこちで行われていた。そんな事実をどれほど日本国民が知っているだろうか?
 戦争という異常下では、人は誰でも鵜野のような行為を行う可能性がある。それは今でも。 だから。

戦場体験者 沈黙の記録 (単行本)

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