「朝日」5/30付の論壇時評に、歴史社会学者の小熊英二氏の「安くておいしい国」の限界が載った。
副題に観光客と留学生とある。なんだろな?と読み始めたところ、今の日本の本質をついてる重要な内容だった。紹介したい。
国際的に観光客の到着数は激増しているようで、日本のランキングは16位(16年)だそうだ。増加率が高く12年から17年に3倍以上になり、今や観光は第5位の産業になっているそうだ。
激増の理由について、小熊氏の経験からいえば、日本は「安くておいしい国」だからだそうだ。
世界の物価は高騰しているが、外国人観光客からすれば日本の外食は、安くて、おいしくて、店はきれいでサービスもよいという。
外国人観光客が大勢来ることに私は、なんとなく良い事のように思っていた。だが問題あり。
日本人の一人当たりのGDPは、95年の世界3位から、17年の25位にまで、落ちこんでいるからだ。
「安くておいしい店」は、客が多く忙しくても利益はあがらず賃金も低い。消費者にとってはいいが労働者には地獄。確かにそれが実態だろう。
一方で留学生も増えたそうだ。12年度は16万人が17年には27万人。
英語圏でなく難しい日本語なのに留学生が集まるのは「働ける国だからだ」そうだ。就労ビザのない留学生でも週28時間まで働けるから。
欧米では留学生の就労は禁止か厳しい制限がかかる。彼らや技能実習生ら外国人がコンビニや配送、建設、農業など低賃金でそれぞれの産業を支えている。
小熊氏は言う。もう「安くておいしい日本」「労働者には過酷な国」はやめるべきだと。「良いサービスには適正価格をつけた方が観光はもっと成長できる。
「牛丼も1000円で売り、最賃は1500円以上にするべきだ」
「日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた」とし、世界から取り残されていると指摘する。
そのとおりと思う。その事に気づかない人も多い。時間と家族や友人とのコミュニケーションを減らすばかりの社会。
そして九州への外国人観光客は減り始めたようだ。八代港へのクルーズ船入港も減るかもしれない。