「世界」1月号に、阪田雅裕元内閣法制局長官の、憲法に「自衛隊の明記は可能か」の論文が載っていた。少し小難しいが大事な論点なので引用しながら紹介したい。
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自衛隊がなぜ「戦力」にあたらないのか。元法制局長官らしく、
9条の条項だけでなく憲法全体の趣旨を踏まえれば、わが国に対する武力攻撃を排除する必要最小限の実力を備えることは「戦力」にあたらないと、解釈してきたと説明する。私もその考えはわかる。
しかし、安保法の成立で集団的自衛権として海外で武力行使もできるようになった自衛隊がを「戦力」にあたらないと、簡単には憲法に書けないとする。
なので、現在の自衛隊を憲法に書く場合、自衛隊が「戦力」でないとわかる書き方をしなければならないとする。
で坂田さん、元法制局長官らしく、3項目を追加するなら、
とりあえず、
A③前2項の規定は、国が外国からの武力攻撃を受けときに、これを排除するための必要最小限度の実力の行使を妨げるものではなく、そのために必要な最小限度の実力組織を前項の戦力と解してはならない。
しかしこれでは、集団的自衛権・安保法制は認められない事になるという。
、
で、第3項に代えて、自衛隊をただ単に自衛のための実力組織と規定し、これを「戦力」の例外とする案として、
B③前項の規定は、自衛(又は「日本国の防衛」)のための必要最小限度の実力組織を保持することを妨げるものではない。
又は、
③前項の規定は、自衛の(又は「日本国の防衛」)のための必要最小限度の実力組織を保持し、そのために必要な最小限度の実力を行使することを妨げない。
しかしこれでも、「自衛」の意味があいまいで一義的でない点で致命的欠陥があるという。過去から現在まで自衛と称して戦争が行われてきたからだ。
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さらに、現行の安保法制下、「存立危機事態」での集団的自衛権行使ができる自衛隊を考慮するなら、
C③前項(第2項)の規定は、自衛のための必要最小限度の実力組織の保持を妨げるものではない。
④前項(第3項)の実力組織は、国が武力による攻撃を受けたときに、これを排除するために必要最小限度のものに限り、武力行使をすることができる。
⑤前項の規定にもかかわらず、第3項の実力組織は、わが国と密接な関係にある他国に対しうる武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる。
とする。
長い条項になるが、憲法への法規範性を失わない「自衛隊の明記」は、これほど矛盾にみちてくるようだ。
私も、書いていてまだ、十分わかっていない。
ひょっとして、アベ首相が参考にするかも…。
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しかし阪田さんも、部隊・装備・訓練、米軍一体など、現実の自衛隊への言及はなく、9条の例外的に認められる必要最小限度の実力組織の在り方が議論されるべき、とも思う。