サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

スノーデン 日本への警告

 この本の刊行にあたって、エドワード・スノーデン氏がメッセージを寄せています。なかなか知的で示唆的です。(引用紹介します。お勧めです)

スノーデン 日本への警告 (集英社新書)

スノーデン 日本への警告 (集英社新書)

 「私は社会人としてほとんどの期間をアメリカ政府のために働いてきました。2013年5月からは社会のために働いています。犯罪と縁もゆかりもない世界中の市民のプライベートな活動を民主的な政府が監視している証拠をジャーナリストに提供した際には、人々が関心を寄せてくれないではないかと不安でした。自分が間違っていたことをこれほど喜んだことはありません。
 2013年以降、大規模監視と自由な社会との関係について世界で激しく議論されています。アメリカを含むいくつかの国では、重要な法律の改革が行われました。他方、政府が監視の法的権限を拡大しようとしている国もあります。私は特定の政策の実現を求めてリークに踏み切ったわけではありません。民主主義社会で生きる市民が、十分な情報に基づいて意思決定を行えるようにすることが目的でした。多くの重要な意思決定が、情報公開や協議を経ずに閉ざされたドアの向こう側で指導者たちによって行われたのであれば、たとえ彼らが選挙で選出されているにしても、その政府を真の意味で民主的な政府と呼ぶことはできません。
 本書に収められているシンポジウムでお話しした際は、ドナルド・トランプ氏が実際に大統領に選ばれる可能性はほとんどないように思えました。シンポジウムでは、すべての人が大規模な監視に関心を寄せるべき理由の好例として、トランプ氏のような独裁者が選出される可能性を引き合いに出したのです。想像もできなかった事態が現実になった今、アメリカを含む民主的な国家の市民が、民主主義とは、引き継がれてきたものの上にあぐらをかいていればよいのではないということに気付くことを願っています。それぞれの世代が常に民主主義を求めて闘わなければならないのです。「トランプ大統領」は、私たちを自らの理念に改めて積極的にかかわらせるための“目覚まし時計”となるかもしれません。
 理念のために立ち上がることは、ときにリスクを伴います。私と同じこと、すなわち不正を暴くために自分の人生を完全に変える事を、誰もができるわけではありません。しかし私たちはみな人生のどこかで、易きに流れる道と正しい道のいずれかを選ばなければならない場面に出会います。私たちはみな、小さなリスクを取ることで社会をよりよくすることができる機会があるはずです。私たちはみな、安全を求めてではなく正しいがゆえに行動する機会があるはずです。
 本書の出版をうれしく思います。読者の皆様が自由な社会における市民としての義務に想いを馳せてくれることを期待しています。日本は私にとって特別な国です。政治に関心を抱くようになったとても重要な時期を日本で過ごしたからです。また日本のみなさんと今回のような対話ができることを楽しみにしています。
 エドワード・スノーデン  2017年2月 ロシア・モスクワにて」