サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

憲法と自衛隊の矛盾

 NHK日曜討論での日本共産党藤野政策委員長の発言が問題になっている。ツイッターで藤野氏は「本日のNHK討論で、軍事費について、『人を殺すための予算』と発言しました。この発言は、安保法制=戦争法と一体に海外派兵用の武器・装備が拡大していることを念頭においたものでしたが、テレビでの発言そのものはそうした限定をつけずに述べており、不適切であり、取り消します」表明している。今日の「赤旗」も同様の記事を載せている。思いはともかく、発した言葉からすれば取り消しは当然だろう。
 今回の参院選は、憲法自衛隊に関わる批判が安倍首相側からも野党側からも発せられ勉強になる。
 安倍首相はツイッターで「志位委員長も『自衛隊憲法違反、将来解散する。だけど災害時には活用するし防衛出動もさせる』と〜述べ〜そんなご都合主義が通るはずがありません。全く無責任です」と批判。
 日本共産党の側は、自衛隊の解消問題は将来の課題で、国際的な環境が整い国民の合意があった時はじめて進めるとしている。
 そして今、問われているのは、現在の自衛隊を海外派兵させるかどうかだと主張する。確かに、集団的自衛権の行使や安保法制で問われているのは、参院選後、内戦状態の南スーダン自衛隊を送るのかどうか、その法律が憲法に違反しているのではないか?と言う点だ。
 自衛隊憲法論について、個人的に到達した考えを書いてみたい。
 自衛隊は単純に違憲か合憲か判断が難しく、
 ①対外加害的な違憲性と純粋に自国防衛的な合憲性の2面性があること。
 ②その判断は、装備・訓練・指揮系統など、自衛隊の実態に即してされること。
 これは過去・現在、どこの国の武力、実力組織にも言えることで、自国防衛性と対外への加害性があり、状況によっていずれかが強まる側面がある。
 日本の自衛隊の場合、災害や、純粋に領土の防衛は個別的自衛権の行使として、合憲性が認められると思う。自衛隊がつくられた際の合憲の論理だったと思う。熊本でもそうだが、特に災害時の自衛隊の活動には、私も感謝している。しかしその自衛隊員が海外に展開し、武力の行使と一体化したり、紛争地に出かけて交戦主体となることを望んでいる現場の自衛官と家族はほとんどいないだろう。この2面性の峻別が大事と思う。
 そもそも自衛隊は米国によって米国の世界戦略上の必要からつくられ、米軍指揮下、加害性の側面も強められ、イラク派兵へと進んできた。空自がイラクで米兵や武器弾薬を輸送したのは、憲法違反と名古屋高裁で審判が下された。
 問題なのは、自衛隊の現在の実態があまり知られていないこと、知らされていないこと。
 ヘリ空母(F35)、空中空輸機、F35、オスプレイ、水陸機動団などは、自国防衛用でなく、対外攻撃力は極めて高い。またその訓練も指揮系統もすべて米軍と一体化している。陸自の司令部は米軍の座間基地内にあり、海自司令部は、米軍横須賀基地内にあり、空自の司令部は横田の米軍基地内にある。当面、米軍の兵站を担う事になるが、これも重要な戦力だ。
 米軍は世界中に前方展開し、いつでも攻撃できる体制を整えている唯一の国家であり、大戦後、欠かさず武力介入をしてきた戦争国家だ。その指揮下に入って訓練し、その戦力の一部になろうとしている(なっている)自衛隊の部隊の違憲性は明らかだ。
 だから安倍首相は、9条をなくし、名実ともに、憲法違反でない状態をつくろうとしている。米軍と一体となった武力行使・戦争が堂々とできるように、と。9条が海外での武力行使の歯止めになって自衛隊員の命を守っているといえる。米国のベトナムイラク・アフガンで犠牲になった若者、相手国住民に犠牲を与えPTSDで苦しむ若者を見れば明らかだ。
 北朝鮮指導部はキャンキャン吠えているだけ、相手にしないでいい。中国は、米国の真似事をしようとしている点で特に問題だ。
 南シナ海の現状変更は、軍事力によらないで解決しないといけない。国際世論の協調こそ唯一の方法と思う。
 「抑止力」論。これは強者が弱者に向けてよく発する言葉だ。自国民に、相手の攻撃性だけを強調し、自国の加害性は封印する。
 日本の9条は先の対外侵略の反省から二度と同じ侵略、加害の過ちを繰り返さないために確立した。これが世界の常識になる日を早く迎えたい。想像すれば、簡単な事なのに。