サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

湾岸戦争−ラムゼー・クラーク

 “湾岸戦争”いま戦争はこうして作られる−ラムゼー・クラーク

ラムゼー・クラークの湾岸戦争―いま戦争はこうして作られる

ラムゼー・クラークの湾岸戦争―いま戦争はこうして作られる

 ずいぶん昔に読んだ本で、内容はほとんど忘れてしまったんですが、一般に知られている事とは違う湾岸戦争の捉え方について勉強させられました。
 この頃、国際貢献では「カネは出すが人は出さない」と、日本への「非難」が宣伝されたことを思い出します。国際貢献は=アメリカ貢献なんですけど。
 今の集団的自衛権の行使も、その時の関連で必要性が強調されることも多くあります。
 ラムゼー・クラークさんは、米国の元司法長官の人権弁護士。
 イラクフセインによるクエート侵攻は確かに、国際法違反だったし、多国籍軍も国連決議にもとづくものだったとは思う。でもイラクでは多くの民間人が被害にあったし、劣化ウラン弾の影響は今もつづいている。
 この本を読むと、イラクは米国の策略にかかった印象だ。その前のイラク・イラン戦争も米国のそのかしがちらつく。この戦争でイラクは疲弊し、戦費をクエートに依存した。
 ルメイラ油田はイラクとクエート国境紛争地域にある。イラクがイランと戦争している時、クエートは、この国境を北上させ、ルメイラ油田の900平方メートルを占拠したらしい。そして米国から供与された傾斜削孔技術によって、イラク領内の石油を盗掘した、と。
 また石油国際価格が下落したなかでクエートやサウジは増産、イラクは減産による価格の回復を願っていた。クエートは債務の返済を迫っていた。
 米国は、イラクがクエートに進行しても、介入しないようなメッセージを送っている。
 「イラク・クエート間の国境紛争などアラブ同士の紛争について正邪を判断するつもりはまったくない。ベーカー国務長官はこの指示を徹底するよう国務省スポークスパーソンに指示している」とグラスビー米大使がフセイン大統領に伝えている。
1990年7月31日に、米国は、イラク軍が燃料、水、弾薬、他の兵站物資をクエート国境に輸送しているのを探知している。その日に、ケリー国務次官補は下院の公聴会で「我々は湾岸友好国のいかなる国とも防衛条約関係にありません。また、国境紛争またはOPEC内部の論争について、ある立場をとるようなことは、歴史的に避けてきました」と証言した。
 ハミルトン下院議員の「このような事態の下で、米軍が参加を強要する、条約に基づく約束はない、と言うことは正しいだろうか」の質問にも、ケリー国務次官補は、「正しいのです」と答えている。
 フセインは、うまくしてやられたし、ハメた奴が利巧だったわけだ。
 諸国の主権者としては、事実を事実をして知ることが大事だ。

 ナイラ証言など米国のメディアコントロールは完璧で、現在でも多くの人々が騙されたままだ。
 米国の戦争指導者は、ベトナム戦争の失敗から解放され、侵略者としての自信を取り戻した。