サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

国際メディア情報戦?−ビンラディン殺害時PR

 国際メディア情報戦・高木徹著の紹介・引用のつづきです。

 2011年5月ビンラディンは、パキスタンの首都イスラマバード郊外の市街地で米特殊部隊によって殺害された。
 国際法から言えば、パキスタン政府に知らせず勝手に侵入して攻撃するのは問題ある事だろう。
 私たちがテレビで知った一枚の写真。ホワイトハウスの「シュチュエーションルーム」で、作戦の現場から送られる生中継の映像を見守るオバマ大統領など閣僚のメンバー。
 その場面で目を引くのが、クリントン国務長官がかたずをのむように口に手をあてているシーンだ。 高木氏によれば「作戦決行中の極限の緊張感を国民と共有し、共感を得ようという作戦」だそうだ。
 確かに、クリントン氏が、息ののんだのは、突入シーンなのか、殺害された瞬間なのか、想像するだけでも緊張する。
 「ビンラディン殺害の決断には大きなリスクがあり、それを押してオバマ大統領は決断した。そして勝利を得た、というメッセージを世界に『売る』ための写真公開なのだ」と。 
 押収物の活用も考えられている。公開されたビデオにテレビを見ているしょぼくれたような老人のビンラディンが映し出されている。
 アルカイダ側が繰り返し流した映像−山岳で銃身の短いカラシニコフもったビンラディンに比べれば、指導者イメージを損なうには十分だろう。
 ビンラディンも殺されたが、テロを行うものも、これに攻撃を加える戦争もなくならない。いずれも住民のまきぞえに考慮しない。平和を取り戻すには、ほかの方法があるはず。

 いずれにしても、どんなニュースや映像にも、それなりの意図が込められていると想像すべきだろう。 
 高木氏の著作には勉強させられる。ただ残念なのは、情報は本来、主権者に帰属しているとの前提を欠き、情報技術論にだけにとらわれていると思えること、その国の主権者の、世界の人々の、メディアリテラシーについての言及がないことと、PR会社や広告会社の社会的責任論が不在なことです。