サスティナビリティ考

地球環境、持続可能、政治・経済・社会問題などについて書いています。 メール kougousei02@yahoo.co.jp

スターン・レビュー①


 「気候変動の経済学」-スターン・レビューを読んだときの驚きは、以下の赤色、青色のところでした。
 「気候変動は、経済学に対して今までにない類の挑戦を迫っている。それは、未だかつて見られなかった、非常に深刻で広範囲におよぶ市場の失敗である。それゆえ、この問題に対処する経済的な分析手法は、世界全体を対象にして、長期の時間スケールを視野にいれ、将来のリスクと不確実性を中心に据えて、重要で見過ごすことのできない変化の可能性を明らかにしなければならない。
 さらに緩和策−温室効果ガスの排出量を削減する対策−は投資と見なすべきである。現在から今後数十年間に支払われる対策コストは、将来ひき起されるであろう深刻な温暖化影響のリスクを回避するために有効だからである。もし、このような投資が賢明に行われるのならば、対処できる範囲のコストに抑えることができるだけでなく、さらに、成長と発展の幅広い機会を得るチャンスとなる。このため、政策は、市場シグナルの健全化の促進、市場の失敗の克服、衡平性とリスクの緩和、を中心に据えて立案されなければならない。
 これから20〜30年を超えて我々がとる行動には、今世紀の末から来世紀にかけて、経済や社会活動に大規模な混乱を引き起こすリスクがある。このリスクの規模は、二度の世界大戦や20世紀前半の世界経済恐慌に匹敵するものだ。そして、一度引き起こされた変化を元に戻すことは難しく、ほぼ不可能である。一方、気候変動問題への取り組みは、長期的に見ると経済成長をも促進する。そして、豊かな国と貧しい国のいずれにおいても経済成長への望みを抑制することなく実現できる。早期に効果的な対策を実施するほど、対策コストを低く抑えることができる。同時に、気候変動はすでに現実に起きていて、人々が気候変動に適応するように支援する方策が不可欠である。緩和策が遅れれば遅れるほど、将来適応することは難しくなる」
 あとも続きますが、ニコラス・スターン氏が、世銀副総裁やイギリスの財務省次官を経験した人であり、報告書が資本主義国イギリス政府、ブラウン財務大臣(当時)が要請したものであることも驚きでした。「市場の失敗」の意味も、それまで私が接した本や新聞の中には、残念ながらなかった。気候変動の被害は世界大戦規模では収まらず、温暖化フィードバックの連鎖反応でポイント・オブ・ノーリターンを超えれば、数億、数十億になる可能性がある。
■スターン・レビュー「気候変動の経済学」→http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=9176&hou_id=8046

■ニコラス・スターン氏→ウィキ・ぺディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3